相手の信頼を一瞬で失う「絶対NGな話の聞き方」 「話を聞く」のは100%受け身の行為ではない

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どんなに「なんでも話して」と懐の深さを見せていたとしても、「結局、薄い一般論しか出てこない」なら、それは単なるポーズでしかなく、余計に信頼できなくなります。そして、「この人に真面目に話しても意味がないから、話すなら別の人にしよう」となり、上辺のコミュニケーションしか生まれなくなります。信頼を失うのは一瞬ですが、取り戻すのはとても困難です。

一歩ずつ距離を縮めていくことが、一番身近なコツ

逆に、信頼される人の特徴として、「簡単に結論付けたりしない」ことがあります。たとえば、明石家さんまさんがゲストの話を「まあ、人それぞれやから」と切り捨てているところをほとんど見たことがありません。「○○はこう思ってんねやろ」「でも、こういうこともあるわけや」と、きちんと“それぞれ”の中身を自分の言葉にして場に戻し、ときには「○○ちゃうか?」と意見を付け加えながら話を進めている印象があります。「聞いた振り」をせずにちゃんと受け止めてくれるから、話す側にも熱が入り、信頼感につながっているのでないでしょうか。

ただ、じゃあそれをマネすれば信頼されるかというと、対話はそれほど簡単ではありません。最近、芸人さんの“回し”という言葉が一般化したり、ビジネスシーンでは「仰るとおり」などの常套句が定着したりしていますが、“誰かのマネ”で目の前の生きた相手と向き合うのは、基本的に無理があります。

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“回し”にしても、ある程度のテクニックはあるにせよ、そのうえで芸人さんは何年も修業して空気や間を身につけているわけで、素人がマネしても空回りするだけです。はやりの常套句も、相手によっては「薄い一般論」と同じくらい、適当な受け答えだと感じることがあります。付け焼き刃は、いつか見透かされます。

やはりコミュニケーションの土台は、自然体です。普通にしていれば「仰るとおり」といったん常套句で区切られるところも、「仰るとおりで~」と続いていくはずです。テクニックやはやり廃りよりも、まず目の前の相手と自分に素直になること。難しい相談には、解決を急ぐのではなく、素直に「むずいな~」でいい。いま1つ共感できなければ、「自分にはわからないけど、あなたがそう思ってるのは理解できた」で十分。相談に乗るのがしんどければ、「ごめん、自分もしんどくてちゃんと聞けるかわからない」と伝えればいい。人生はto be continuedです。そうやって互いに無理せず、一歩ずつ距離を縮めていくことが、一番身近なコミュニケーションのコツだと私は思います。

もちぎ 作家

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もちぎ / Mochigi

元ゲイ風俗とゲイバーで働いていたゲイ。ギリギリ平成生まれ。現在は学生兼作家としてエッセイやコラム、小説などを手がける。取材や対談などで得た知見や、経験談などをブログやツイッターにて日々更新中。ネコと暮らしている。

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