定率減税は、かつて小渕恵三内閣期の1999年に20%(住民税分を含む)の定率減税を実施したが、その後なかなかやめられず、小泉純一郎内閣になって2007年度にようやく廃止できたのだが、そのときにも2006年度に減税幅を半減させた後に2007年度に全廃と、段階を踏んでやめる羽目になった。減税の割合が大きかったことも、容易にやめられなかった要因だろう。
岸田首相は、一時的で限定的な還元策とすることを念頭に置いているようである。そうなると、なかなかやめにくいうえに、高所得者ほど恩恵が大きくなる定率減税よりも、定額減税ということになるかもしれない。
所得制限しなければ物価高騰をあおる
ただ、根本問題として、所得税の定額減税は、所得税の課税最低限以下の所得者には何の効果もない。所得税の各種控除の適用額次第ではあるが、直近における所得税の標準的な課税最低限は、単身者は約121万円、夫婦と中学生以下の子1人では約169万円である。
(課税最低限以上ではあるが)低所得者に定額減税を行うことで、所得格差是正にはつながる。しかし、定額減税がなくても物価高でも不自由なく生活ができている高所得者にまで定額減税を行えば、逆に消費を刺激しすぎて物価高騰をあおってしまう。
もし定額減税を行うならば、しっかりと所得制限を設けて実施しなければ、定額減税の恩恵が減殺されてしまう。また、時限を設けてということなら、賃金上昇が物価上昇に追いついていない今だけ、という限定の仕方もあろう。
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