社会と折り合う「ちょうどいいわがまま」の程度 現役の医師が勧めるストレスを軽減する生き方

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わがままに生きれば、自分の好きなことができます。同時に「生きづらさ」を遠ざけることができます。「苦手だ」と思う人には近づかなければストレスになりません。心底、仕事が嫌なら転職してしまえばいい。つまり「わがまま」は人生の選択肢を増やせるということです。

「嫌なことから逃げる」というと、「嫌なことを克服するのが人生というものだ」なんて批判されることもあるでしょう。でも批判されたところで、それで救われるわけではありません。自分の心と体が快適になるのなら、逃げるに限ります。

「他人に邪魔されずに生きる」

人の人生に口出しをするヤツがいても、自分さえしっかりしていればかき回されないですむのです。家族や信頼している友人の言葉以外には、耳を傾ける必要はありません。しかもときには家族や友人にも惑わされることなく自分を貫くことだってありです。自分以外の人間に邪魔されないこと、それが大事なのです。

ちょうどいいわがまま
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生きていると、どうしようもなく嫌なことがあるものです。世の中にはどうしようもない人間だっているものです。何度か軌道修正ができないかを試してみて、努力しても何も変わらないときは、こちらが生き方の選択をすればいい……。

嫌なことから逃げる生き方は、ストレスを減らします。いうまでもなく、ストレスは何かを強いられていたり、我慢していたりなど、自分の本意ではない場合に生まれやすく、モヤモヤとした負の感情をもたらします。

ストレスは心身に悪影響を及ぼし、倦怠感や無気力感といった精神的なものから、体調不良などの肉体的なものまで、さまざまな悪影響を自身に及ぼします。その結果、慢性炎症が起きて、動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞、認知症などのリスクを高めてしまうのです。ストレスとがんの発症には密接な関係があることがわかってきました。

わがままに生きていれば、ストレスが減り、充実感や幸福感を多く得られるはずです。思い切りのわがまま、他人の顰蹙(ひんしゅく)を買うわがままではありません。適度でほどほどの「ちょうどいい」わがまま。その距離感を実感してみませんか。

鎌田 實 医者・作家

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かまた みのる / Minoru Kamata

1948年東京生まれ。医師・作家。東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院へ赴任、以来40年以上にわたって地域医療に携わる。現在、諏訪中央病院名誉院長。日本チェルノブイリ連帯基金理事長、日本・イラク・メディカルネット代表として、被災地支援にも精力的に取り組んでいる。2006年、読売国際協力賞、 2011年、日本放送協会放送文化賞を受賞。ベストセラー『がんばらない』(集英社)をはじめ著書多数。近著に『相手の身になる練習』(小学館)、『70歳、医師の僕がたどり着いた 鎌田式「スクワット」と「かかと落とし」』(集英社)などがある。

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