「安っぽいのに100億」美術作家の常識破りな思考術 一見チープな作品に世界一の高値がつく理由とは

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資本主義の世の中では価値の指標として「お金・金額」が扱われます。つまり、作品に高い値段がつけばつくほど、その作品には価値があると見なされるようになります。

価格が上がる要素に「希少価値」がありますね。その他にも、例えばものすごく古かったり、民族的な伝統を示したりするなど、歴史的に価値がある「歴史的価値」も価格を上げる要素です。

まるで資本主義のバグをついたハッカーのようだ!

クーンズのスゴイところは、この「歴史的価値」を〝今〟作ってしまおうとしたところです。作品を、先述したような美術の歴史上に位置づけて紹介したうえで、「この作品は今までの美術の歴史から見て、最新の作品です!歴史的価値があります!」と主張したのです。

たとえそれがでっち上げのはったりだとしても、ひとたび高額で売れてしまえば、その値段分の歴史的価値がついた作品として歴史に残ります。

さらには、作品を買ったお金持ちは、その100億円の作品を見いだした審美眼のある人間として歴史に残ります。作る人間と買う人間の利害関係が一致したことで、クーンズの作品は爆発的価値を生んだのです。

まさに、資本主義のバグをついたハッカーであり、ビジネスマン……! 天才だ!

セールスマン時代の経験で経済に強く、美術史にも詳しい彼ならではの作戦でした。

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