「安っぽいのに100億」美術作家の常識破りな思考術 一見チープな作品に世界一の高値がつく理由とは
クーンズの作品《ラビット》(1986年)は、現存作家では最高額の100億円という値段がつきました。補足しますが、《ラビット》はステンレススチール製です。全部ダイヤモンドでできているとかでもありません。
引用するテーマの数が増えることで、爆発的に価値が高まった
彼は、値段が競り上がっていくオークションの仕組みと美術作品の価値のつき方の仕組みを利用して、自分の作品を100億円という価格にまでつり上げたのです。
超絶技巧で作られたステンレススチール製の空気人形の彫刻作品には、現代美術が扱ってきたテーマが大量に盛り込まれました。
①よりリアルで精巧なものを作ろうとした歴史、②マルセル・デュシャンが男性用小便器という低俗な既製品を美術として見せ始めた歴史、③アンディ・ウォーホルが大衆文化を美術に取り込んだ歴史、④ジェフ・クーンズ独自の「空気」のテーマ、というように。
「現代美術は美術の歴史を踏襲しつつも、さらにその先にある最新の時代を切り拓くものだ!」と言わんばかりの意気込みを感じます。
彼の作品はぴっかぴっかの鏡面仕上げで作られており、周りに他の作品を展示していればそれが空気人形に映り込みます。周りの作品の歴史を吸収して自分に映すというのです。ここまでくればもう圧巻ですね。こうして、作品の価値がどんどん高まっていったのです。クーンズの作品は100億円という破格の値段になりました。
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