「安っぽいのに100億」美術作家の常識破りな思考術 一見チープな作品に世界一の高値がつく理由とは
クーンズはセールスマンだった
ジェフ・クーンズは、美術作品の価格に敏感であるという、まるでビジネスマンみたいな美術作家ですが、そもそもホントにセールスマンをしていました。
シカゴの美術大学やメリーランド州ボルチモアの大学で絵画の勉強をして卒業してからは、ニューヨーク近代美術館(MoMA:The Museum of Modern Art, New York )で働き出します。MoMAは、美術史の中でもとくに重要な作品を数多く所蔵している美術館です。現代美術における世界の有力者ランキングでは、MoMAの館長がいつも上位に入ります。
クーンズはMoMAで美術館スタッフとして会員権勧誘の仕事をするのですが、在籍中に歴代1位の売り上げをたたき出したこともあります。最強のセールスマンだったそうです。
クーンズはその後、作家として活動するようになります。彼はデュシャンのレディ・メイド作品に影響を受けて、空気人形のおもちゃをそのまま作品として置いたりしました。彼にとって「空気」というテーマは命の源という意味合いがありました。ですから空気人形は命を吹き込まれた人形だったのです。
彼が1980年に開いた「THE NEW」という個展では、最新の掃除機をそのままショーウィンドーに並べる展示を行いました。つねに新しいものが求められ、模索される美術作品を、つねに新作を求められる家電製品になぞらえたのです。
彼はこのように、一見するとただの空気人形や掃除機でしかないものを、どう特別なものに見せるかにこだわりぬいた作品を作っていきます。彼の作品はコンセプチュアルかつ、現代アートの仕組みに対する批判の目を持っていました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら