「がんばりすぎる人」ほど変われない悲しい理由 もはや自分の意識では動いていない

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(P23より「通常の葛藤と自分が分裂する葛藤の違い」)

分裂した自分が生まれる理由

では、自分が分裂してしまうのはなぜなのでしょうか。

それをひもとくキーワードは「トラウマ」と「生存戦略」です。

自分の心身に大きく影響を及ぼした過去の出来事のことを、トラウマといいます。今や日常的に使用されている言葉であり、たいていの人は自分とは関係のない概念だととらえていますが、実は想像よりも広く深い意味と影響力を持っています。

トラウマ体験は、その場で受け止めきれないほどの悲しみや怒り、恐怖といった強烈でネガティブな感情や記憶、身体反応などを生み出します(わかりやすくするために、ここではいったん「感情」の話だけをしますね)。

受け止めきれないほどの感情を持ったままでは、つらすぎて日常を生きることができません。生活を維持するためには、その感情を「私」が意識できないところに封じ込めておく必要があります。行き来をできなくするための「壁」のようなものをつくって、その向こうに感情を封印するのです。

壁の向こうでは、本来の「私」の代わりに感情を引き受ける別の「わたし」が生まれます。こうして、おぞましい感情は「私」ではなく壁の向こうの「わたし」のものとなり、「私」はつらい感情の影響から免れ、守られるのです。

壁の向こうの「わたし」は、「トラウマ担当のパーツ」、あるいは単に「パート」や「パーツ」と呼ばれたりします。

人が自分を守るために、無意識のうちに生み出した生存戦略ですね。

◎抑えきれないほどの怒りを引き受ける「わたし」
◎受け止められないほどの恐怖を身体感覚とともに封じ込めている「わたし」
◎親密な人に裏切られた衝撃から、親密さを拒絶する「わたし」
◎愛されなかった過去の経験から、だれかの愛情を深刻に求める「わたし」
次ページ危機的な状況が過ぎたあとも「パーツ」は存在し続ける
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