「子どもには新しい経験を!」親の願望に潜むワナ 発達障害の臨床医が教える「逆説的子育て論」

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自閉スペクトラムの特性がある人は、変化に対する違和感が多くの人よりも強いことがあります。その場合、変化の多い生活をしていて、従来どおりではない出来事ばかりが続くと、心身ともに疲れてしまいがちです。

幼稚園に通っていれば、毎日同じスケジュール、同じメンバーで過ごせるというわけではないでしょう。子どもはいろいろな場面で、新しい体験をしているはずです。それは変化が苦手な子にとっては、気持ちが忙しくなってしまう日々かもしれません。

新しい体験を積み重ねていくなかで、せめて道順くらいはいつもと同じであってほしい。マンガのお子さんはそう感じているのかもしれません。

ほかにも、「同じ道のほうが気持ちいい」と感じる子や、「いつものルールで行動すると達成感を得られる」という子もいます。感じ方はさまざまですが、「いつもと同じ」を重要だと感じる子もいるということです。

判で押したように「いつもと同じ」を重視

大人はよく「子どもにはいろいろな体験をしてほしい」と言います。子どもの経験の幅を広げるために、あえて初めての場所や活動に参加させることもあります。「こだわりの強い子だからこそ、変化に慣れさせたい」と話す人もいます。

しかし、「いつもと同じ」を好むタイプの子には、そのような対応が負担をかけてしまうこともあります。初めての体験ばかりで疲弊して、新しい活動への意欲を持ちにくくなる子もいるのです。

子どもが道順にこだわる場合に、変化に慣れさせようとして「たまにはこっちの道から行こう」と誘いかけ、子どもが嫌がったら引き下がる、という接し方をする人がいますが、子どもに明らかにストレスをかけているのであれば、やめたほうがいいでしょう。

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