一方、恐妻家の目に触れぬように育てられた、秀忠とお静の子、幸松はどうなったか。幸松は、信州高遠藩の保科家へ養子に出されている。そこで竹刀振りに論語の素読と文武両道を成すべく、教育を受けることになった。元服すると名を幸松から「保科正之」と改めて、3代将軍の家光と出会うことになる。
たくましく育った秀忠の子、正之
正之にとって家光は異母兄だったが、兄弟としてではなく、あくまでも家臣として謙虚な態度をとった。そのことでかえって家光に好かれて、側近に取り立てられている。
秀忠が恐妻家だったばっかりに、不運にも正之は城外で苦難の道を歩むことになったが、かえってたくましく育ったようだから、人生というものはわからない。正之は、4代将軍の家綱も補佐するなど、将軍家を支える人材へと成長していく。
秀忠と怖すぎる妻とのパワーバランスが期せずして、のちの将軍、家光や家綱の側近を育てることになったのである。
【参考文献】
大久保彦左衛門、小林賢章訳『現代語訳 三河物語』(ちくま学芸文庫)
大石学、小宮山敏和、野口朋隆、佐藤宏之編『家康公伝〈1〉~〈5〉現代語訳徳川実紀』(吉川弘文館)
宇野鎭夫訳『松平氏由緒書 : 松平太郎左衛門家口伝』(松平親氏公顕彰会)
平野明夫『三河 松平一族』(新人物往来社)
所理喜夫『徳川将軍権力の構造』(吉川弘文館)
本多隆成『定本 徳川家康』(吉川弘文館)
笠谷和比古『徳川家康 われ一人腹を切て、万民を助くべし』 (ミネルヴァ書房)
平山優『新説 家康と三方原合戦』 (NHK出版新書)
河合敦『徳川家康と9つの危機』 (PHP新書)
二木謙一『徳川家康』(ちくま新書)
日本史史料研究会監修、平野明夫編『家康研究の最前線』(歴史新書y)
菊地浩之『徳川家臣団の謎』(角川選書)
山本博文『徳川秀忠』(吉川弘文館)
福田千鶴『徳川秀忠―江が支えた二代目将軍』(新人物往来社)
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