スタバは「コーヒー先進国」では流行らない

なぜオーストラリアでは失敗したのか

その理由は、オーストラリアに根付いたコーヒー文化と、チェーン店よりも個人経営の店を好む国民性にあった。

オーストラリアでのコーヒーの歴史は、1950年代半ばまで遡る。第二次世界大戦後、労働力不足を補うため、オーストラリアは主にヨーロッパから多くの移民を受け入れた。とりわけイタリア人移民が持ち込んだコーヒー文化の影響を受け、それまで紅茶中心だったオーストラリアでエスプレッソコーヒーを飲む習慣が根付いた。

個人経営のカフェを好む文化

「オーストラリアのコーヒー市場が特徴的なのは、客が(チェーン店ではなく)個人経営のカフェを好むところです」

オーストラリアのコーヒー専門誌、BeanScene編集長のサラ・ベイカー氏はいう。「Gloria JeansやHudsonsなど、目抜き通りでうまくやっているチェーン店もいくつかはあります。ただ、オーストラリアでは圧倒的大多数の人が、個人経営のカフェでコーヒーを買っているんです」。

大企業よりスモールビジネスを好む、というのはオーストラリアの国民性のようだ。2012年、アメリカン・エキスプレスによる消費者調査によると、「サービスの質が同じなら、大企業とスモールビジネスのどちらで多く買いたいか」という質問に対し、オーストラリアでは51%の人がスモールビジネスと一番多く、ついで39%がどちらでもよい、大企業は10%だった。一方日本では、「どちらでもいい」が61%で圧倒的に多く、スモールビジネスは25%、大企業10%である。

「チェーン店は伝統的に、多くの客を相手にして効率よく大量生産することに重きをおきます。基本的にどの店も同じコンセプトで、お客さんが個人的に愛着を持つ理由があまりありません」とベイカー氏は説明する。「オーストラリア人は、大量生産されていないユニークなものを好みます。カフェにおいても、特色があって独自のアイデンティティを持った店が好きなんです」。

個人経営のカフェでコーヒーを一杯買うと、平気で4~5ドルはする。決して安くはないが、客は飲み物だけでなく、そこでの体験も含めてお金を払っているという。「お気に入りのバリスタと毎朝挨拶を交わし、「いつもの」コーヒーを頼む、という小さなことが大切なんです。コーヒー一杯が4~5ドルしても、オーストラリア人は気にしません。そのコーヒーが美味しくて、心を込めて淹れられていて、忙しい朝に5分だけほっと一息つける、自分だけの行きつけのお店で飲むのであれば。そのたった5分が、その人にとって一日のうちで一番幸せな時間だったりするんです」(ベイカー氏)。

オーストラリアでも大都市には、いわゆるコンビニコーヒーが存在する。セブンイレブンで売られる1ドルコーヒーは、無人の機械を使用し客が自分で淹れる。しかし、いくら価格が安くても、コンビニコーヒーが個人店のスペシャルティコーヒー(高品質コーヒー)を駆逐することはないとベイカー氏は言う。「コンビニコーヒーの質は、スペシャルティコーヒーの質には及びません。オーストラリアは個人経営のカフェが圧倒的に多い分競争も激しく、より良い質のコーヒーを提供ようと各店がしのぎを削っています」(ベイカー氏)。

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