スタバは「コーヒー先進国」では流行らない なぜオーストラリアでは失敗したのか

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オーストラリア・スペシャルティコーヒー協会(ASCA: Australian Specialty Coffee Association)会長のブレント・ウィリアムズ氏も、オーストラリアにおけるコーヒーの質の高さに太鼓判を押す。

「世界中から最高の豆を取り寄せ、しっかり訓練を積んだバリスタが腕を振るう。お客さんも、本当に美味しいコーヒーを求めてくる。この相互作用の結果、オーストラリアは世界でも名高いコーヒー文化が生まれたのです」

オーストラリアコーヒーは種類が豊富

オーストラリアのカフェでは、「コーヒーを一杯」という注文は通用しない。

一口にコーヒーといっても、フラットホワイト、カプチーノ、ラテ、ロングブラック、ショートブラックなど様々な種類がある。その上、普通の牛乳の代わりに低脂肪乳や豆乳を使ったり、カフェイン抜きにしたりなど、客は様々な注文をつけて自分好みの味に仕上げる。

「スターバックスは、オーストラリアのコーヒー文化をあまり理解していない。彼らは世界各地でエスプレッソベースのコーヒーを導入するのに慣れてはいますが、既にコーヒー文化が出来上がっているオーストラリアでは苦戦したのでしょう」とウィリアムズ氏は言う。

オーストラリアの中でも、特にメルボルンはコーヒーの街として知られ、通りのいたるところでカフェが賑わっている。

「メルボルンのコーヒーが特別なのは、人々が最高のコーヒーを求めているから」と語るのは、メルボルンの大学生ツナさん。「メルボルンの人にとってコーヒーはただの飲み物ではなく、豆を栽培する人、焙煎する人、バリスタから飲む人までをつなぐものです。コーヒーを愛しているからこそ、みんな淹れ方や出し方にとことんこだわります」。

美味しいと評判で常に客でごった返しているようなメルボルンのカフェは、Laneways(小道)にあることが多い。目抜き通りではなく、入り組んだ小道に隠れた名店が多いのは、オーストラリアの地価の高さや人件費の高さに由来する。

「実は、オーストラリアでコーヒーだけを売って儲けるのは難しい」とベイカー氏は言う。だからこそ、大通りにゴージャスなカフェを構えるのではなく、入り組んだ小道に簡素な店を構えてコストを下げる。

「賃料、人件費、豆や牛乳の値段などを考えると、コーヒーだけでは採算はとれない。利益を上げるのはもっぱら食べ物です。スターバックスのようなチェーン店は、儲けが出るほどコーヒーを売るのは難しい。かと言ってそれをカバーできるほど食べ物を売れるわけでもない」(ベイカー氏)。

オーストラリアのカフェは食べ物が高い。小さめのバゲットに具を少し挟んだサンドイッチで10ドルほどするのは普通である。腕のいいシェフを雇い、朝食やブランチのメニューを充実させるなどして食べ物で採算をとるのがオーストラリアのカフェのやり方だ。

お気に入りのバリスタと会話しながら、毎朝自分好みのコーヒーを淹れてもらう。入り組んだ小道の先に、こんな素敵な場所があったのか、と新たなカフェを冒険気分で発掘する。

国民がコーヒーの質へ強いこだわりを持ち、個人経営カフェならではの人的交流を愛すオーストラリアでは、アメリカ流の大規模チェーンは苦戦を強いられたようだ。
 

岡 ゆづは 東京大学4年生

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おか ゆづは / Yuzuha Oka

1994年生まれ。東京大学教養学部4年生。2014年オーストラリア・メルボルンへ留学し、フリーランスジャーナリストとしての活動を開始。オーストラリアの国営放送局、ABCとSBSのニュースルームでインターンとして働き、英語での取材やニュース原稿執筆、ラジオ番組の制作などを行っている。

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