提案してみたところ、夫は即快諾。こうして「夫:会社員(大黒柱)妻:専業主婦(少しだけ働く)」から「夫:買い出し係 妻:大黒柱(ライター1年目)」へと、夫婦の役割がなんとも大胆な変化を遂げることになったのです。
冷蔵庫に常備しておいてほしいものは、あらかじめキッチンの黒板ボードに書いておけば、私は一切関わることなく、夫1人で買い出しを完結できます。ふたりの間で「買い出しチャレンジ」と命名。自転車での買い出しが、ワクワクするミッションに早変わりしました。
当時の私は、フリーランスとしてライター活動を始めたばかりでした。夫の発病前から文章は書いていたのですが、あくまで扶養の範囲内で趣味程度という感じだったのが、急に稼ぎ頭として家計を支えることになり、締切に追われててんてこまいだったのです。
「東洋経済オンライン」では「チェーン店最強のモーニングを探して」という毎週更新の連載をしているのですが、毎週取材先を探し、半日かけて取材して、まる1日かけて記事を書くというルーティンを繰り返し、その合間にいくつかの媒体でも執筆。
しかも、今は手が回らず休止していますが「どうしても私たちの生活を動画で残しておきたい」という気持ちもあり、YouTubeチャンネルにまで手を出しました。
つまり脳内は常に締切でパンパンで、買い出しと献立決めに費やすリソースが足りない状況が続いていたのです。
そんななか、夫が買い出し担当を請け負ってくれたことで、時間的にも精神的にも大助かりです。また、夫が何を買ってきたのかを確認するのが、夫婦の毎日の楽しみになり、会話のきっかけにもなったのでした。
夫が食材を買って冷蔵庫に片付ける。私は冷蔵庫にある食材で料理をする、夫が残った食材をチェックして買い出しに行く、というルーティンは、夫の生活にハリをもたらし、私の生活にゆとりをもたらしました。
妻が「とにかく褒める」ことで夫に起きた「変化」
「買い出しチャレンジ」にあたり、最初に心に決めていたのは、「何があってもとにかく褒める」ということでした。私の代わりに買い物に行ってくれる心優しき夫を、しょんぼりさせるようなことがあってはなりません。
夫は買い出し初日に、100g98円の特売品の豚肉のジャンボパックを、なぜか2パック買ってきました。2人暮らしなのに、2パック。どうやら出かける前に「いくらぐらい買ってきたらいいの?」と聞かれたので「3000円分ぐらい」と答えたため、3000円になるように調整したらこうなったようでした。
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