「忍者ヒグマ」駆除でも終わらない北海道民の恐怖 札幌の住宅街で人身事故、観光客も要注意

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一連の管理計画について道庁の担当者に計画の真意を聞いた。

「問題個体を特定して排除することで人とのあつれきを抑制することができます。ただし、最近は市街地に出没するなど状況が変化してきていますので、個体数調整の可能性については改めて検討し、基準などを決めていこうということです」(ヒグマ対策室)

一方的な「駆除ありき」「個体数調整」ということではないということだ。まずは問題個体を発生させないための取り組み、そして出没個体の有害性に応じた対応を行い、そのうえで地域個体群存続のための方策としてモニタリングや総捕獲数管理、生息環境管理などを総合的に実施していくとしている。

OSO18の悪夢再び?

ヒグマによる人的被害や農作物被害がさらに増え続け、深刻化する前に、厳格なルールの下に個体数調整という対策の検討に踏み込むことはやむをえないのではないか。もちろん、行き過ぎた開発行為や自然破壊、人口減少による里山の荒廃といった社会的事象や現象が、ヒグマの市街地への出没を加速させている面も否定できない。それだけに、ゾーニング対策を徹底するなど人とヒグマが共生できる環境づくりに力を注ぐべきことは言うまでもない。

ヒグマ駆除にあたるハンターへの抗議、苦情が殺到したことについて、北海道猟友会の関係者は「これだけクマの被害があるようなところに来て、生活して、実態を見てくれと言いたい」と反論したと報じられている。

その直後、北海道根室市の「養鹿場」でエゾシカがヒグマに襲われる被害が発生。地元メディアは「OSO18の悪夢再び」と報じた。これが北海道の現実なのである。ヒグマと共生せざるをえない道民の声を尊重しながら、解決の道を探っていくしかないのではないか。

(※1)「捕食者としてのヒグマ」間野勉 https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/35/1/35_1_57/_pdf
(※2)「増えすぎたシカはヒグマにとって恵みか災いか? ヒグマとシカの種間関係に関する研究」下鶴倫人 https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-19K06833/19K068332021hokoku/              
山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログでは、最新の病状などを掲載中。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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