次に、D1受容体(D1R)とD2受容体(D2R)を遮断する2種類の薬を与え、同じ実験を行いました。その結果、D1RやD2Rを個別にブロック(遮断)すると、もらえるご褒美(報酬)のうれしさが少なくなり、また、待ち時間が長いともらえるご褒美の価値が下がる(遅延割引)と感じる傾向が強くなることがわかりました。
また、D2Rをブロックすると、必要な労力が大きいと感じた場合、その労力に対する報酬の価値が下がる(仕事量割引)と感じやすくなることが判明しました。
さらに、D1RとD2Rを同時にブロックすると、待ち時間が長いほど報酬の価値が大幅に下がるような相乗効果が得られましたが、逆に労力が大きい場合の報酬の価値の下がり方はそれほど大きくならない効果が得られることが明らかになりました。
自分の顔を見るとやる気が出る?
「やる気」の研究はほかにもあります。大阪大学の研究(⑨)によれば、自分の顔を見ることがやる気を出すことにつながるそうです。
意識できないほど瞬間的、すなわちサブリミナルに表示されたときでさえ、やる気を引き出すドーパミンを放出する脳部位である「腹側被蓋野」が活性化するそうです。
逆に他人の顔が表示された際には、新情報に対応する扁桃体が活性化していたそうです。そもそもこのような脳の働きは、自分の顔を他人の顔よりも素早く認識する現象「自己顔の優位効果」として知られていました。
さらに、研究では、美容フィルターを使った自己顔の変化が腹側被蓋野の活動に影響しないことも確認されていて、自己顔と他者顔の無意識的区別は、顔の形状全体よりも、目や鼻などのパーツに基づいている可能性を示しています。ひょっとしたら、やる気が起きないときは、自分の顔を見るだけでやる気がわいてくるのかもしれません。
出典:
①Carpenter S. K., Pan, S. C. & Butler, A. C. The science of effective learning with spacing and retrieval practice. Nat Rev. Psychol. 2022; 1: 496-511.
②Buch, E. R., Claudino, L., Quentin, R., Bönstrup, M. & Cohen, L. G. Consolidation of human skill linked to waking hippocampo-neocortical replay. Cell Rep. 2021; 35.
③Yonelinas, A. P., Ranganath, C., Ekstrom, A. D. & Wiltgen, B. J. A contextual binding theory of episodic memory: systems consolidation reconsidered. Nat. Rev. Neurosci. 20,364-375 (2019).
④Kapnoula, E. C. & Samuel, A. G. Wait long and prosper! Delaying production alleviates its detrimental effect on word learning. Lang. Cogn. Neurosci. 0, 1-21 (2022).
⑤Greenacre L., Garcia, J. E., Chan, E., Howard, S. R. & Dyer, A. G. Vertical versus horizontal Spatial-Numerical Associations (SNA): A processing advantage for thevertical dimension. PLOS ONE, 2022; 17: e0262559.
⑥Nakamura, N. H., Fukunaga, M., Yamamoto, T., Sadato, N. & Oku, Y. Respiration-timingdependent changes in activation of neural substrates during cognitive processes. Cereb
Cortex Commun. 2022; 3: tgac038.
⑦Decker, A., Dubois, M., Duncan, K. & Finn, A. S. Pay attention and you might miss it: Greater learning during attentional lapses. Psychon Bull Rev. 2022; doi:10.3758/
s13423-022-02226-6.
⑧Hori Y, et al. D1- and D2-like receptors differentially mediate the effects of dopaminergic transmission on cost-benefit evaluation and motivation in monkeys. PLOS Biol. 2021;
19: e3001055.
⑨Ota C & Nakano T. Self-Face Activates the Dopamine Reward Pathway without Awareness. Cereb Cortex. 2021; 31: 4420-4426.
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