いくら勉強に役立つ知識を知っていてもやる気がなければどうにもなりません。やる気も脳と密接な関係にあります。
行動の意欲、すなわち「やる気」は、私たちの日常生活の全ての活動、仕事、学習、スポーツなどを支える重要な要素であり、その意欲レベルが行動の結果を決定します。期待される報酬が大きいと意欲が上がる一方で、労力や時間など、報酬を得るためのコストが大きいと逆に意欲は下がる傾向にあります。
報酬とコストを天秤にかけて、実際にその行動をするかどうかの計算には、脳内伝達物質の一種であるドーパミンが関与していると考えられています。つまり、よりドーパミンを多く受け取れるほうがやる気がわいてくるといえます。
したがって、脳の中でドーパミンを受け取るための受容体が意欲と密接に関わっているのです。ドーパミン受容体にはD1とD2の2つの型があることが知られています。どちらの受容体も薬(阻害剤)でその働きを阻害してやると、意欲が下がることが動物実験でも確認されています。
「労力コスト」「時間コスト」を天秤にかける
日本の量子科学技術研究開発機構の研究者たちは、ドーパミンの受容体が報酬と「労力コスト」「時間コスト」を天秤にかけてやる気を出させる2つの仕組みに関与していることを明らかにしました(⑧)。
実験では、サルにバーを握る行動と報酬(ジュース)の関連を学習させ、その後、報酬の量、必要な行動の回数(労力コスト)、報酬を得るまでの待ち時間(時間コスト)をさまざまに変えて行動を観察しました。
結果として、コストが大きく報酬が少ないとサルは行動を諦める傾向があることが確認されました。