実際の勉強に役立ちそうな研究を紹介しましょう。
「英単語は声に出して覚える」という鉄則はよく聞きますが、スペインの認知・脳・言語に関するバスククリナリーセンターの研究によれば、外国語の単語学習において、発音を聞いた直後に声に出すのではなく、脳が単語の音を処理する時間(約4秒)を待つことが効果的であるそうです(④)。
これは新しい単語を聞いた直後は脳がその単語の理解に全力を尽くすため、認知リソースが分散され、学習効果が低下することが原因であると考えられています。単語を聞いてから4秒ほど待って声に出す場合、脳が新しい単語の理解を完了させ、認知リソースに余裕ができるため、学習効果が低下しないとのことです。
数字は「縦」に並べたほうが覚えやすい
ほかにもあります。面白いことに、モナシュ大学の研究によると、数字は「縦」に並べたほうが脳は素早く処理できるのだそうです(⑤)。1から9までの数字のペアをモニターに映し出し、参加者がジョイスティックを使って大きいほうの数字を指示する方法で、異なる数字配置の処理速度を調べる実験が行われました。
その結果、大きい数字が上にあるとき、参加者は他のどのような数字の配置よりもはるかに速く反応しました。これは、私たちの脳における数直線が実際には下(小さい数)から上(大きい数)に向かっていることを示唆しています。
また兵庫医科大学の研究チームは、息を吸う瞬間に集中力・注意力が途切れ、その結果、記憶力や判断力など、さまざまな認知機能の低下を引き起こすことを、機能的MRIを用いた研究から明らかにしました(⑥)。実験結果から、息を吸う瞬間に、「集中力の低下」を示す右側頭頭頂接合部、右中前頭回、背内側前頭前皮質など特定の脳領域での活動の低下が判明しました。