「快適な暮らし」捨て紛争地で支援活動を行う理由 右足失った男性が口にした「You are our hope」

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気がついたら援助活動を「人口に対する患者数の割合」というマクロ的な視点で捉え、仕事の価値を測るクセがついていた。誰の目にもわかりやすい、数字上の実績を追っていた。

そのとき気づかされた。戦争の被害者からすれば、私たちの存在は、「世界のすべてから完全に見捨てられたわけではない」という、「希望」になりえるのだ、と。

「日本の社会に人道援助の理解と支持を拡げ、日本から世界の活動現場により大きなサポートを届ける」

これが、国境なき医師団日本事務局が掲げる事業における使命だ。国境なき医師団が届けているのは、医療だけではない。 明日を生きる希望をも届けているのだ。海を越え、国境を越えて、苦境にある多くの人たちに希望を届けるため、これからも挑戦を続けていく必要がある。

ウクライナと桁違いに少ない報道

課題もある。1つは世界各地で起きている人道危機に対する世の関心の低さだ。

国境なき医師団の活動の柱は、「緊急医療援助」と「証言活動」の2つ。なぜ証言活動が必要なのかというと、現場で目撃した人道危機を国際社会に伝え、医療援助だけでは変えられない問題の解決に取り組むためだ。だが、これがなかなか難しい。とくに日本においては。

ここに、お伝えしたいデータがある。

国境なき医師団の活動規模を予算ベースで国ごとにみると、2022年は1位がイエメン、2位はコンゴ民主共和国、3位は南スーダンだった。これらの国で、深刻で大規模な人道危機が起こっているからだ。

では、これらの国に関するニュースは、その年、日本でどれくらい報道されていただろうか。以下は、国内の大手6紙の紙面で関連する記事が掲載された数だ。

・ イエメン 217回
・ コンゴ民主共和国 98回
・ 南スーダン 110回

一方で、同じ期間にウクライナの記事は約3万7000回あった。桁違いの差がある。

日本での報道を見ていて私が個人的に感じるのは、アメリカが積極的に関与している戦争は報道するが、ほかの人道危機は “日本”や“日本人“との接点がないとなかなか注目されないということ。SNSやメディアなどの発信は今後の重要な側面だと感じている。

国境なき医師団は私がかつて派遣されたスーダン、シリアやイエメンを含め、現在、世界の75の国や地域で援助活動を行っており、約4万9000人が活動する。日本からも毎年約100人の海外派遣スタッフが、現地に赴いている。

国境なき医師団 非営利の医療・人道援助団体

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こっきょうなきいしだん / Kokkyonaki ishidan

民間で非営利の医療・人道援助団体。紛争地や自然災害の被災地、貧困地域などで危機に瀕する人びとに、独立・中立・公平な立場で緊急医療援助を届けている。現在、世界約75の国と地域で、医師や看護師をはじめ4万9000人のスタッフが活動。1971年にフランスで設立、1992年には日本事務局が発足した。日本国内では、援助活動に参加する人材の採用・派遣、人道危機や医療ニーズを伝える証言・広報活動、現地医療活動を支える資金調達などを行っている(2022年実績)。

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