「俺はお客だ」在宅介護で介護職にパワハラの実態 利用者が権利主張、なぜ起きてしまうのか?
介護サービスの利用者からの要望が、ときにはエスカレートすることがあります。また、「サービスを受ける親の快適な生活のため」という目的を見失って、介護スタッフに不満や怒りをぶつけるケースも。とくに在宅介護ではこのような、利用者から介護スタッフに対する「パワハラ」が起きつつあるといいます。介護アドバイザーの髙口光子さんに現状をうかがいました。
介護保険制度によって、「措置」から「契約」へ
介護保険制度が創設されたのは2000年。それ以前の介護サービスは老人福祉法などに基づいて提供されていました。
当時は「サービス」ではなく「措置」と呼ばれていました。措置とはつまり行政処分で、「この高齢者は一人で生活ができず、どうやら幸せでなさそうだから、行政の措置として高齢者施設に入れよう」というものです。高齢者本人も家族も、「お国のお世話になって申し訳ない」という意識で、高齢者施設の職員も「してやっている」という気持ちの強い人が多かったと思います。
介護保険制度が導入されると、「措置から契約へ」というスローガンのもと、サービス利用者と提供者は対等な関係で、被保険者である高齢者が保険料を支払い、自分に必要なサービスを選択して受けることができるようになりました。介護職員も利用者のことを、契約によってサービスを選択した、いわばお客様として接するような教育・指導も始まりました。