「俺はお客だ」在宅介護で介護職にパワハラの実態 利用者が権利主張、なぜ起きてしまうのか?

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制度導入から23年がたって、いまでは多くの利用者が「保険料を支払って契約し、サービスを利用する」という感覚をもっていると思います。しかしその感覚がいきすぎて、「客なんだからもっとやってもらっていいはず」「払ったお金分の、あるいはちょっとおまけがつくくらいのサービスをしてもらって元を取らないと損する」という、誤った客意識・権利意識が一部の人に生まれていることも事実です。

なぜ、いきすぎた客意識・権利意識が生まれるのか

そこに、社会全体にさまざまなハラスメントへの意識の高まりが起きたことで、介護の現場にもパワハラ(パワーハラスメント)、モラハラ(モラルハラスメント)、カスハラ(カスタマーハラスメント)などの概念がもちこまれるようになりました。

クレームや苦情に対応する三つのポイント

パワハラなどの言葉が登場する前から、介護の現場では同じようなことは起きていて、それは「クレーム」や「苦情」といった言葉で表されていました。多くはクレームから始まって、徐々に苦情となっていきます。クレームは具体的な要望ですが、苦情は言うに言えない心情としての苦しみを抱えている場合が多いようです。

私たち介護スタッフはクレームや苦情がもちこまれたとき、▼この人は何かに困っているのではないか、▼ここまで強く言うのには、何か根拠があるのではないか、▼ここまで言い募るのには何かの思いがあるのではないか、この三つのポイントを心に置いて、話を聞き対応するようにしていました。

「入れ歯をなくした」という申し出の後ろに何が?

かつて、私が勤務していた施設で、男性利用者の家族から「ショートステイで入れ歯をなくしたようだ」と問い合わせがありました。話を聞いて、まず「困っている」と言っているのかどうかを探ります。入れ歯がなくて食事ができなくて困っているなら、こちらの保険を使って作り直す、出来上がるまでのあいだ、食べやすい形態の食事を提供する、などの対応策を提案します。

困っている様子はあまりないのに、見つからない状況を説明しても納得してもらえない場合、何か根拠があるのかもしれないと考えます。たとえば前にもなくし物をしたことがあって、「また起きた」と感じていると考えられる場合には、いきさつを精査して、再発防止策を提示するようにします。

これらの対応策で済まないときには、なくした物に特別な思い入れがあるのだと考えます。

この男性利用者にとって、なくした入れ歯は大切な物の一つでした。認知症が出始めている男性を車いすで連れて、家族総出で歯科医院に何度も通い、しかもこれまであまり関係の良くなかった息子がつくってくれたものでした。私たちスタッフはその気持ちを共有して、改善の決意を表し、気持ちに寄り添って謝りました。

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