がん末期「自分の死と死後」を仕切った男性の凄さ 「もしも」のときの事、早めに家族で話し合いを

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多くの場合、いざ体が弱ったり、介護で大変な時期に差し掛かるもっと手前の段階の、時間にも身体的にも余裕があるときのほうが、「もしも」についていろいろと考えることができ、自分の本音に沿った選択をイメージしやすいように感じます。

切羽詰まった状況の中では、本意ではない選択になってしまうことがあるという意味でも、早いうちから話し合えるといいと思います。

一方、「もしも」のときにこうしたいという希望は、その時々の状況で変わって当たり前。目の前にその現実が訪れたときに、希望や結論が変わる場合もあるのは当然です。大切なのは、話し合いで一度決めた内容ではなく、話し合いをするプロセスや、日常の中で話し合える関係性です。

親子で考える「死ぬ前にしたいこと」

「もしも」の話を切り出すときは、子どもたちが先に「自分はこう過ごしたい」というプランを提示してみるのも1つです。

例えば「人生の最期は、リッチな施設で悠々自適に過ごしたい」と思うなら、「あとこれぐらいは貯金しよう」と節約や働くモチベーションになるかもしれないですし、「死ぬまでにあそこに行ってみたい」「あの場所に住んでみたい」など、どこで過ごすかを考えるだけでも、人生の過ごし方が変わってくるかもしれません。

子どもが考えるプランに触発されて、親がその後を考えるきっかけになる場合もあると思います。

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一番良くないのは、“もしもの話=嫌な話題”だと思ってしまうこと。ある程度年を重ねてきたら、親だけでなく子どもも同じ“老化仲間”です。親のこれからとともに、自分のこれからも考えながら、日頃から「もしも」の話ができるといいですね。

ネガティブに捉えるのではなく、家族の中で普通に話し合える文化が作れるのが理想的です。旅行の計画と同じような感覚で、「楽しく過ごすためにどう計画するか」と、ぜひ前向きに話してほしいと思います。

(構成:ライター・松岡かすみ)

中村 明澄 向日葵クリニック院長 在宅医療専門医 緩和医療専門医 家庭医療専門医

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なかむら あすみ / Asumi Nakamura

2000年、東京女子医科大学卒業。国立病院機構東京医療センター総合内科、筑波大学附属病院総合診療科を経て、2012年8月より千葉市の在宅医療を担う向日葵ホームクリニックを継承。2017年11月より千葉県八千代市に移転し「向日葵クリニック」として新規開業。訪問看護ステーション「向日葵ナースステーション」・緩和ケアの専門施設「メディカルホームKuKuRu」を併設。病院、特別支援学校、高齢者の福祉施設などで、ミュージカルの上演をしているNPO法人キャトル・リーフも理事長として運営。近著に『在宅医が伝えたい 「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』(講談社+α新書)。

 

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