政府は無計画な政策の無駄打ちをやめよ

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政府は無計画な政策の無駄打ちをやめよ

東日本大震災の発生から2カ月以上が経過した。この際、率直に言っておきたい。被災地域で、今なお生命が脅かされている現在の状況下では、無能な政治は害悪でしかない。

たとえば菅直人政権は、5月10日、東京電力福島第一原子力発電所事故をめぐる被害者への補償金支払いの枠組みの一環として、東電を実質的な公的管理下に置く方針を固めたという。一見、問題解決に向けて進捗があったようにみえるが、はたしてそうか。

原発事故の被害者は、農業者、漁業者、商工業者など多方面に及ぶ。そうした中で、特に深刻な状況に陥っているのは、原発から20キロメートル圏内に居住している住民や、その圏外であっても放射 線量の高さにより、計画的避難地域の指定を受けた人たちである。すでに、これらの人々の多くは収入が途絶 している。

東電の限界を国が補え

東電は1世帯当たり100万円、単身者には75万円の仮払金支払いに動いている。しかしあえて言えば、収入の道を失ったうえ、強制的に避難を命じられた被害者たちにとっては、この程度のカネは焼け石に水である。

今、より高額の資金を被害者に提供することは喫緊の課題であり、そのためには、東電に代わって国が仮払いに動くしかない。しかし、国は枠組みの議論ばかりに時間を費やしている。被害者の救済という目的からすれば、このような菅政権の行動は何の進展も生んでいない。

東電による仮払いが被害者たちの間で不評を買っているのは、金額の少なさだけではない。

補償支払いの請求用紙には、「場合によっては、返還を求める」という主旨の一文が挿入されている。その延長線で、東電は「後日、精算します」という説明を行っている。これらの言葉や説明が被害者の心を逆なでしているからこそ、不評を買っているのである。

しかし、東電を擁護する気持ちはまったくないとはいえ、東電にも限界があることは認めざるをえない。上場企業の東電は、株主の存在を無視できない。株主訴訟への意識は、仮払いの金額、さらには「返還の場合も」、あるいは「精算します」という用意周到な一句を加えざるをえない心境にさせているに違いない。

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