絶好調!ホンダ「S660」に見えた唯一の課題 スポーツカーは「誰が」操るクルマなのか

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軽自動車では初の装備となる「アジャイルハンドリングアシスト」。電子制御により、ドライバーの運転を補助する仕組みを実現した

ただし、「S07A」型はNシリーズの開発時点でS660のようなスポーツモデルへの搭載も考慮して開発がなされていたエンジンであり、開発陣によれば「現在のスペックは潜在的性能の70%程度」であるという。事実、S660の出力カーブを見ると常用域である4000回転後半から7500回転あたりまで最高出力の64馬力を発揮し続けているが、これは強制的に軽自動車のメーカー自主規制上限である64馬力に合わせていることの証であり、伸び代が大きく残されている裏付けでもある。

「安全で楽しい」新しいスポーツカーの課題

エンジンを後輪軸の前に搭載したミッドシップレイアウトを採用

世界の名だたるスポーツカーと同じく、エンジンを後輪軸の前に搭載したミッドシップレイアウトを採用する「S660」。その走りがいかに刺激的であるかは各方面で絶賛されていることからもおわかりいただけるだろう。

筆者もサーキットでの全開走行を体験しているが、軽やかに鼻先を右に左へと変えながら後輪を軸にしてコーナーをクリアする「S660」の操縦安定性には目を見張るものがある。筆者は大型バイクを移動の足とし、ときにサーキット走行も行うが、コーナリング時における爽快感はバイクのそれに勝るとも劣らない。

ただ、ひとつだけ気になることがある。それは軽自動車初の装備である「アジャイルハンドリングアシスト」の存在だ。詳細な技術解説は省くが、車両挙動安定装置である「VSA」のセンサーを使い、ドライバーが意図したコーナリングラインを保てないとセンサーが判断した場合に、車両の内側にブレーキをかけることで理想的な走行ラインを保とうとする技術だ。つまり、電子制御により、ドライバーの運転を補助する仕組みである。

車両挙動の安定こそクルマを速く走らせる第一歩であることから、装備そのものには賛成だ。ただ、その介入具合が大きく、さらにはその機能を任意でオフにできないことに疑問を感じた。一般的にミッドシップレイアウトは鋭いコーナリングの醍醐味が味わえる反面、限界点を超えるとスピンモードに陥りやすい。

だからこそホンダとしては、それを恐れずに「だれでも手中に収めることのできるスポーツカー」(椋本氏)を成立させるためアジャイルハンドリングアシストを採用したのだ。「安全で楽しい」新しいスポーツカーの誕生であると歓迎したいが、ドライバーとクルマの対話という観点からすると正直、物足りなさを感じてしまう。

ある開発陣は「われわれの中にもそうした声はあり、今後の課題として受け止めています」と語ることから、現時点が人と技術の協調運転に対する模索段階であるとすれば希望が持てる。今後の発展に期待したい。

西村 直人 交通コメンテーター

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にしむら なおと / Naoto Nishimura

1972年1月東京都生まれ。WRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。(協)日本イラストレーション協会(JILLA)監事。★Facebook「交通コメンテーター西村直人の日々

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