絶好調!ホンダ「S660」に見えた唯一の課題 スポーツカーは「誰が」操るクルマなのか

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実は「S500」の前身として1962年に「S360」という2人乗りのスポーツカーをホンダは提案し、実際に走行可能なモデルも造り上げ本気で発売を願っていた。しかし、当時の役所は自動車メーカーの育成という名目の下、それを許さず、結果として「S360」は生産されることはなかった。

2013年11月に開催された「東京モーターショー」でS660のプロトタイプが初披露されたが、その傍らには1台だけ復刻された「S360」が出展されていた。会場に行った読者の中には記憶されている人もいるだろう。周知のとおり「S660」は本田技術研究所50周年記念事業の一環だが、「S360」が果たせなかった市販化という夢が託された1台であるともいえよう。

もう「ミニバンメーカー」とは言わせない!

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同社のBEATとS660のエンジン特性比較。全域で大幅な出力アップをしているのがわかる

前述のとおりスポーツカーからスタートしたホンダの4輪事業だが、時代の変化に対する敏感な反応が身を助けた。バブル崩壊後には国内における新しいカテゴリであるミニバンの「オデッセイ」や「ステップワゴン」を生み出し順調に販売台数を伸ばしながら、ハイブリッドカーでは「プリウス」に対抗すべく独創のIMA技術を搭載した「インサイト」(初代は1999年発売)で応戦した。

一方で、ミニバンの躍進ばかりが目立ってしまったのか、「ホンダはミニバンメーカーになってしまった」と肩を落とすホンダファンも多かった。ただ、ホンダはそれにもきちんと応えている。オデッセイには「アブソルート」、そしてステップワゴンには「スパーダ」という標準モデルとは別に足回りのセッティングを大幅に変更したスポーツモデルを用意した。

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同じく新設計のターボチャージャーのレスポンスイメージ。赤いラインが新設計

先ごろ新型となったステップワゴンに至っては開発責任者曰く「歴代スパーダでいちばんスポーティに仕上げた」と胸を張るなど、ホンダのスポーツ精神は今も健在だ。実際には、足回り担当者のスポーツモデルに対する意気込みが強く、その勢いを抑えるほうが大変だったようだが……。

「S660」が搭載するターボエンジンは、ホンダのドル箱的存在にまで成長した軽自動車“N”シリーズの搭載エンジンがベースだ。メーカー発表の資料にはS660専用の部品をふんだんに採用した旨の言葉が並ぶが、ボディ前後に赤いホンダバッジを装着した「タイプR」こそスポーツとする者からすれば、専用エンジンでない時点で寂しさを感じることだろう。

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