金融庁が仕組み債の次に狙い撃つ「外貨建て保険」 金利上昇で販売活況でも、「顧客本位」に疑義
ところが、金融庁の調べによれば、一部の銀行では目標額を達成した段階で保険を解約し、別の保険に乗り換えさせていた。ある銀行で販売された外貨建て保険商品の場合、4分の1が中途解約されていたケースがあった。目標に到達した段階で解約すると、保障という当初の目的が果たされないうえ、別の保険に再加入すれば手数料が余分にかかる。
運用にも問題がある。外貨建て保険は円貨と比べた利回りの高さをうたう反面、円高に振れた場合に受け取れる円が減る為替リスクをはらんでいる。潜在リスクの説明もそこそこに、表面上の高金利ばかりが強調されている。
最後は相続だ。外貨建てを含む死亡保険金には相続税の非課税枠がある。一般には法定相続人数1人あたり500万円が限度だが、相続目的で外貨建て保険を購入する顧客に対して、非課税枠を大幅に上回る保険金を設定する銀行が存在した。
1つの商品で複数の機能をになえる外貨建て保険だが、見方を変えれば器用貧乏とも言える。販売手数料や為替手数料を考慮すれば、運用目的の投信と保障目的の生命保険を別個に契約したほうが安上がりという見方もある。金融庁は顧客に対して商品性の説明が十分か、外貨建て保険が本当に顧客のニーズに沿っているのか、銀行の販売体制を点検する方針だ。
金融庁と銀行の間で温度差
監視を強める金融庁とは対照的に、当の銀行業界からは仕組み債ほど警戒する声が聞こえてこない。仕組み債は顧客に大きな損失が発生した一方、外貨建て保険は「今買っている顧客は、よほど円高に触れない限り損をすることはない」(外貨建て保険を販売する地方銀行幹部)ためだ。
だが、金融庁の懸念は外貨建て保険の商品性というよりも、手数料目当てに本来必要でない顧客にまで営業をしていないかという販売体制にある。現時点で顧客が大きな損失を被っていないからといって、お咎めなしというわけではなさそうだ。
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