金融庁監督局長が指摘する保険業界の深刻な病巣 「悪しき慣習から脱し商品の差別化で競い合え」
差別化の余地はいくらでもある
──損害保険業界で不正問題が続発する背景や構造要因について、監督官庁としてどう捉えていますか。
トップライン重視の経営やコンプライアンス(法令順守)意識の欠如、顧客軽視の姿勢などが複合的に絡み合って起きている問題だ。また業界の慣習として、競争が商品の差別化ではなく、乗り合い代理店への便宜供与などに向かってしまっていたこともある。
──商品の差別化については、そもそも保険商品は金融庁の認可制であり、すぐ他社にキャッチアップされやすい仕組みになっているため難しいという声を、保険会社からよく聞きます。
保険の自由化前に同一商品、同一価格で提供していたことの影響なのか、楽をしようと考えているのかよくわからないが、商品を差別化できないと思い込んでいるのではないか。
商品だけでなく、付随するサービスやアフターフォローなどを総合して価値を提供するのが、保険会社の役割だ。差別化の余地はいくらでもある。保険以外の便宜供与で勝負するのであれば、もはやそれは保険会社ではない。
代理店から「その保険をぜひ売らしてくれ」と言われるぐらいの優位性のある商品を開発してみてほしいが、そういう気概はなく、時に便宜供与に熱を上げ、果ては保険金の不正請求を見逃すという事態まで起きた。
大規模な乗り合い代理店の歓心を買う商売のやり方をしたからこそ、保険料のカルテルにつながっていった面もある。
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