母は、父ほど人生の理屈を教えてくれたりはしませんでした。それでも6人の子どもを育てる中で、背中で生き方を教えてくれたと思います。
そんななかで母がいつも口にしていた言葉があります。
「打鉄還需本身硬」
「鉄を打つときには、元の材料の硬さが必要」という意味です。
つまり何をやるにしても、自分の実力が必要という意味です。
他力本願や、何か上手いやり方で物を手に入れるのではなく、自分を鍛えて、実力をつけるのが一番大事、ということです。
母が言う実力とは、必ずしも学力とか、力が強い、といったことだけではないのです。
例えば、長女は可愛いので──それも実力です。それによって俳優になりました。
次女は頭がいいので、医者になればいいと言われ、姉は本当に医者になりました。
私の「実力」は見当たらない時期が長かったのですが、歌が歌えるとわかって以来、それが私の「実力」、と母は確信していたようでした。
母の“厳しさ”
「人に頼らない、人を信じ過ぎない、自分が強くなるのがすべて」、と母は言い切るのです。
「世の中は冷たい、強くないと生き残れない」とも言います。
私は母の意見には必ずしも同意ではないのです。自分の強さも大切ですが、周りの助けと協力がないと大きな成功は難しいと思っています。
でも、確かに自分に実力がなければ、発展することは不可能です。
自分の「長所」を見つけることがとても大切です。
そして、長所を自分の実力に変えるのは、努力次第だと思います。
母は簡単に褒めてはくれません。いつも「あなたはこのくらいで満足なの?」という態度で私たちに接します。
時々褒めてもらいたいと思いますが、さらにその上を要求してくる母の凄さには脱帽します。
「自己満足しないように、もっと硬い鉄になれるはず」という母の厳しさが私たちきょうだいのがんばりの元になっているのは確かです。
自分の長所を見つけ、磨き続ける大切さを教えてくれた母に感謝しています。
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