「中国EVの攻勢」にドイツ自動車産業が震えた日 「ヨーロッパの病人」の心臓部に迫る時代の転換

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9月上旬にミュンヘンで開催された自動車ショーでプレゼンする、中国のEVメーカー、BYDでデザインのトップを務める、ヴォルフガング・エッガーー氏(写真:Felix Schmitt/The New York Times)

何十年もの間、「ドイツ製」という言葉は最先端の自動車技術と設計の代名詞となってきた。だが、ドイツの自動車メーカーは今、電気自動車(EV)の増産という世界的な競争で後れをとっている。いかに早く追いつく必要があるかを表現するために「チャイナスピード」という新たなキャッチフレーズを使う経営幹部もいる。

この言葉には、中国の自動車産業が巨大EV産業へと急速に変貌を遂げている状況が反映されている。そしてそのスピードは9月4日にドイツのミュンヘンで開幕した国際自動車ショー「IAAモビリティ2023」にも、はっきりと現れていた。ショーを席巻したのは中国の新興自動車メーカーだったからだ。

今年フォルクスワーゲン(VW)を抜いて中国で最も販売台数の多い乗用車ブランドとなった中国のEVメーカー、BYD(比亜迪)は、洗練された新型セダンとSUV(スポーツ用多目的車)を発表し、満員の観衆から喝采を浴びた。

ヨーロッパ勢は「恐怖で身動きできない」

ベルリンを拠点とするEV市場の独立系アナリスト、マティアス・シュミット氏は、「ヨーロッパの人々は、中国勢がヨーロッパでどのような業績を上げることになるのかと、恐怖で身動きできない状態になっていると思う」と話した。

今回の自動車ショーは、ヨーロッパで最大の規模を誇るドイツ自動車産業、さらにはドイツ経済全体が危うい状態となっているタイミングと重なった。かつてはドイツ経済の重要な牽引役だったドイツの自動車メーカーは、今では反対に足を引っ張る存在となっている。ドイツの自動車メーカーの6月の生産台数は前月比で3.5%減少。ドイツの鉱工業全体を圧迫し、6月の鉱工業生産指数を前月比で1.5%低下させた。

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