10人に1人が「エネルギー貧困」に?英国の超深刻 爆上がりするエネルギー料金に悲鳴も
新型コロナウイルスの新規感染者数が減少傾向となり、一気に規制解除が進むイギリスだが、「ウイルスの次」の手ごわい敵がやってきた。世界的なガス価格の高騰を受けて、4月から光熱費が50%以上上昇するのである。消費者物価指数も30年ぶりの高水準に達し、賃金の上昇率に追いつかないほど生活費が大幅に膨らむ見込みだ。政府はバラマキ支援策を打ち出したが、焼け石に水状態だ。
光熱費が一気に約5000円上昇
「おかしいな」
昨年夏頃、電気・ガスのサービスを提供する会社から送られてきた請求書を見て、筆者は不思議に思った。それまでは1カ月約90ポンド(1万4000円)の請求額だったのに、突然120ポンド(1万9000円)に増えていたからだ。光熱費を使いすぎたのだろうかと考えてみたが、思い当たるところがない。それにしても、急に30ポンドも増えるとは。
契約を解約してほかの会社に乗り換えようかと思っている間に、隣人たちとの会話の中で「私のところも、大幅に上がったよ」という声を聞いた。
8月以降、イギリスは「エネルギー危機」に突入していた。天然ガス市場の逼迫で、エネルギー小売り企業が続々と破綻した。天然ガスは発電に多用されるため、電力料金も急騰し、しまいには食品供給にも懸念が出るようになった。スーパーの棚からパスタやトイレットペーパーが一時途切れる現象も発生した。
9月末からはガソリン供給が滞った。ガソリン自体が不足していたわけではないのだが、給油所にガソリンを運ぶトラック運転手が不足していた。欧州連合(EU)出身の運転手らがイギリスのEU離脱で国に帰ってしまったせいもある。軍隊を動員してガソリンを運ぶ作業を手伝う羽目になった。
不安に襲われた人々は、車に乗ってガソリンスタンドに列を作った。筆者の近所のガソリンスタンドでは、在庫がなくなったのか、複数の給油ポンプに「使えません」という黄色の貼り紙が付いた。
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