ここまで「中国不動産バブルは崩壊しない論」を整理してきたが、ここから先は、私自身の専門分野であるバブルについて絞って私論を述べたい。結論から言うと「中国不動産バブル崩壊は、中国経済に長期的に深く傷跡を残し続ける」と考える。
日本のバブル崩壊が経済を壊したメカニズムとは?
まず、日本のバブル崩壊が、なぜこんなにも日本経済に深く長いダメージを与えたのだろうか。個別の要因や政策などは一切無視して、なぜ機能不全に陥り経済的損失が生まれたのか、結果として起きた事実に焦点を当ててみよう。
前回の私の記事「やっぱり今は金融危機への『黄信号』が灯っている」では、ハーバードビジネススクールで教鞭をとるロビン・グリーンウッド教授の「金融危機のレッドゾーン」について紹介した。
バブルと言えば日本の1980年代、というわれわれにとっては、まったく意外なことだが、家計部門による住宅不動産バブルと、企業部門によるバブルが同時に起きていた(同時にレッドゾーンに入っていた)のは、第2次大戦後に起きた多くのバブルの中で、日本の1980年代だけなのである。
したがって、日本のバブルは例外中の例外、今の中国不動産バブル崩壊のみならず、どんなバブルに対しても、あれは似ても似つかないものなのだ。
では、まったく参考にならないかといえば、それもまた違う。なぜ、バブルが経済を壊したのか。
一般的に、不動産バブルが悪いのは、不動産が不良債権化し、銀行の資本が毀損し、不動産部門以外の経済全体へ銀行融資がシュリンク(収縮)してしまうからである。不動産に銀行融資はつきものなので、不動産バブル崩壊は金融危機になることが多い。したがって、バブル崩壊が悪いのは銀行システムなど金融システムを機能不全に陥れるからである。
日本の場合は、銀行中心の資金配分システムであり、それが不動産バブル崩壊による資本毀損をもたらした。これはごく普通のバブル崩壊である。
一方、日本が異常だったのは、すべてがバブルになっていたことだ。1980年からの元祖金融ビッグバンにより、企業は銀行からも資金を提供され、市場からも、社債、転換社債、株式増資とやりたい放題であった。
そして、設備投資もやりたいだけやる。しかし、それでは資金が余ってしまい、ひたすら財テクと称して、あらゆる金融商品を企業法人として購入し、それが株式市場を引き上げ、まさに自己実現バブルを作っていった。
さらに強烈な円高だ。それは不況要因と思われているが、実際には、円高輸入メリットは膨大で、原油価格の国際的な下落もあり、超大規模な輸入差益が生まれた。自動車業界は、輸出自主規制の下に利益率の高い車だけを輸出できるようになり、原料価格の低下、輸出価格の上昇と、企業利益も増加していった。
企業法人は、会社にツケを回して、接待、営業という名の遊びをしまくり、法人需要も膨らみ、企業の売り上げ、利益も増加した。これも、実体経済には珍しい自己実現バブルだった。この中で、企業は地道なビジネスモデルではなく、銀行はひたすら不動産融資先を探した。サービス業は、バブル的な豪華で高い見かけ重視のサービスを展開するビジネスモデルに頭を絞り、下のレベルではひたすら営業をかけて、余っている金(カネ)をバラまいた。
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