「高賃金」の仕事ほど、生成AIに取って代わられる 「ルーチンワークほど危ない」は思い込みだった

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歴史を振り返ると、人間はこれまでも大きな技術変革に対し、適応力を発揮してきた。たとえば、産業革命によって多くの手工業の仕事が自動化され、多くの人が職を失った一方で、新たな工業製品や機械が生まれ、自動車生産ラインでの組み立て作業や、機械の修理、設計などの新たな職種が誕生した。また、コンピューターの普及によって多くの事務作業や計算作業が自動化され、職を失った人々が出たものの、コンピュータープログラマーやソフトウェアエンジニア、データアナリストなどの新たな仕事が生まれた。

リスキリングは間に合うのか

こう考えてみると、新技術の登場によってある仕事は消滅する一方で、別の新たな仕事が生まれることは間違いないように思える。しかし、注意しなければならないのは、職を失った人々がそのまま右から左へと横滑りで新たな仕事に就けるわけではないことだ。先の例で言えば、それまで手工業の仕事に就いていた人が何もせずに機械の設計の仕事に就けるわけでもなく、事務作業を行っていた人がそのままソフトウェアエンジニアになれるわけでもない。新たに生まれる仕事に就くためには、相応の努力が求められるのはいつの時代も変わらない。

オープンAIのサム・アルトマンCEOは、アメリカのニュース番組「ABCニュース」の独占インタビューに対し、近い将来、一部の仕事がAIに置き換わる可能性があることを認め、「それがどれだけ早く起こるかが心配だ」と語っている。これまでの産業革命やコンピューター化と異なり、わずか数年で人間の仕事がAIに置き換えられた場合、人間はそれを受け入れ対応できるのか、というのである。

ここ数年リスキリング(学び直し)という言葉がブームになっている。ただ、同氏の懸念どおりAIの導入が早期に進み、人間の仕事を代替するようになったとしたら、悠長にリスキリングに取り組む余裕はあるのだろうか。

城田 真琴 野村総合研究所 DX基盤事業本部 兼 デジタル社会研究室 プリンシパル・アナリスト

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しろた まこと / Makoto Shirota

2001年に野村総合研究所にキャリア入社後、一貫して先端ITが企業・社会に与えるインパクトを調査・研究している。総務省「スマート・クラウド研究会」技術WG委員、経済産業省「IT融合フォーラム」パーソナルデータWG委員、経産省・厚生労働省・文部科学省「IT人材需給調査」有識者委員会メンバー等などを歴任。NHK Eテレ「ITホワイトボックス」、BSテレ東「日経プラス10」などTV出演も多数。著書に『FinTechの衝撃』『クラウドの衝撃』 『エンベデッド・ファイナンスの衝撃』『決定版Web3』(いずれも東洋経済新報社)、『デス・バイ・アマゾン』(日本経済新聞社)などがある。

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