「高賃金」の仕事ほど、生成AIに取って代わられる 「ルーチンワークほど危ない」は思い込みだった

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アメリカでは、教育産業で早くもその影響が表れている。

2006年に設立され、アメリカのカリフォルニア州サンタクララに本拠を置く教育テクノロジー企業Chegg(チェグ)は、2023年5月1日に行われた決算説明で同社CEOが「ChatGPTの登場によって新規顧客の獲得に影響が出ている」と発言したことから、株価が一時約48%も下落した。

チェグは月額15.95ドルからのサブスクリプション形式で、オンライン教育や学習支援サービスを提供している。2021年には『フォーブス』誌の「アメリカで最も価値のある教育テクノロジー企業」にも選出されている。

しかし、これまで高いお金を払って塾で教えてもらっていた問題の解き方をChatGPTは無料かつ24時間いつでも教えてくれる。こうなると、塾や家庭教師、あるいは通信教育などは明らかに不利である。

チェグも手をこまぬいているわけではない。オープンAIと共同開発でGPT-4を組み込んだ「CheggMate(チェグメイト)」という新サービスを発表し、学習状況に合わせてパーソナライズしたテストやサポートの提供を開始した。しかし、同社の株価は依然として低迷している。

7800ものポジションが「採用一時停止」に

事務や管理系タスクが生成AIの影響を受けやすいというゴールドマン・サックスのレポートを裏づけるように、早くもそうした業務に携わる人員の採用停止に踏み切る企業も出てきている。

今年5月、自らもAIの開発を進めているアメリカIBMのアーヴィンド・クリシュナCEOは、時間の経過とともにAIに取って代わられる可能性のある約7800のポジションの採用を一時停止する計画を明らかにした。

クリシュナCEOは人事などのバックオフィス部門の採用を一時的に停止、または減らし、顧客対応ではない約2万6000人に影響があるとしている。これには、自然減で空席になったポジションの補充が行われないことも含まれる。

採用を一時停止する理由として、同氏は「今後5年間で顧客対応でない業務の30%がAIと自動化によって置き換えられると予測できるからだ」と述べ、具体的には「雇用確認書の提供や、部署間の従業員の異動などの特定のタスクは完全に自動化される可能性がある」としている。

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