大阪万博「工事遅れ」背景に施工能力不足の深刻 大規模災害の復旧復興への対応をどうするか

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日本経済の重要機能が集中する首都圏や太平洋岸エリアに被害が集中すれば、日本経済全体に大打撃となるが、ネックになるのが建設施工能力である。この先、人口減少が進む中で、施工能力が一段と低下することは避けられないだけに、状況はますます厳しくなる。加えて、日本の財政状況が悪化する中で、目黒教授は「貧乏になっていく中での総力戦を戦う覚悟が必要」と警鐘を鳴らす。

経済安全保障の観点から考えれば、東京一極集中を是正し、富の分散化を図ることが最も有効な対策だろう。7月に閣議決定した新しい国土形成計画でも、東京一極集中の是正に取り組み、「シームレスな拠点連結型国土」を目指す方針を掲げたが、現状では東京一極集中が簡単に止まるとは考えにくい。

事前に住宅などの建物を備蓄

目黒教授が提唱するのは「21世紀型いざ鎌倉システム」である。日本の建設会社の海外進出を積極的に支援し、海外の建設工事で日本人技術者・技能者の育成を図る。「いざ大災害」となったときに、現地の外国人スタッフも引き連れて、日本に帰国し、復旧復興工事に当たる。海外工事を中断して、すぐに日本に帰国できるのかという問題はあるが、災害大国・日本としては施工能力を補うのに必要な対策だろう。

事前に住宅などの建物を備蓄しておくという方法も有効だ。東日本大震災では約5万3000戸の応急仮設住宅が建設されたが、敷地を整備してプレハブ式の仮設住宅を建設するには時間がかかる。首都直下地震が発生した場合、必要となる応急仮設住宅は東日本大震災での戸数では済まないだろう。

阪神・淡路大震災のとき、アメリカから大型トレーラーハウスを導入するために道路交通法を改正したが、その後はトレーラーハウス、コンテナハウスを備蓄する動きは出ていない。

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