大阪万博「工事遅れ」背景に施工能力不足の深刻 大規模災害の復旧復興への対応をどうするか

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つまり、着工床面積ベースで年700haのフル操業が続いているところに、大阪・関西万博の会場面積155haの建設工事が加わったのである。もちろん会場全体にパビリオン(展示施設)を建設するわけではないが、会場周辺を含めた道路などのインフラ整備から地盤・基礎工事、複雑な形状の建築工事を開幕までにきれいに仕上げるとなると、かなりの施工能力を投入する必要がある。

いくらプレハブ化を進めたとしても、膨大な仕事量を大阪圏の施工能力で対応するのは厳しいと考えざるをえない。

では、大阪圏外の建設会社は期待できるのか。万博工事は、建設業界にとってはスポット需要。国家的な行事とはいえ、地元のお得意さんの仕事を断ってまで、わざわざ万博工事を取りに行くだろうか。しかも、2024年4月からは時間外労働の上限規制が適用されるので、施工能力の削減は避けられないことを考えると期待薄だろう。

震災からの復旧復興工事で不足する施工能力

建設需要が急激に増大するのは、万博やオリンピックなどのビッグイベントや大災害などの緊急時である。2011年の東日本大震災の発生後に、震災復旧復興工事の状況を取材したが、このときも東北地区の建設会社は施工能力不足に悩まされていた。

国や地方自治体は、大災害に備えて建設業界団体と災害協定を結んでいる。1日でも早い復旧復興をめざして国や自治体は工事発注を急ごうとするが、地元の建設会社は大量の仕事を受けきれない事態に陥る。当時、東北6県の建設投資額(2010年度見込み)は3.1兆円だった。ここに総額22兆円の復旧復興工事が投入されたのである。

このときは、全国から建設労働者を集めて工事が進められたが、阪神・淡路大震災が発生した1995年当時、建設投資額は年79兆円規模で施工能力にも余裕があった。その後は公共事業費削減などで建設投資額は右肩下がりで減少し、2010年度は年41兆円とほぼ半減。その間、建設業界は厳しい供給調整を強いられてきたわけで、復旧復興工事が完了するまでに10年もの時間を要したのである。

2013年9月には「東京オリンピック・パラリンピック2020」の招致が決定した。その直後に、筆者は国土交通省の幹部を取材し、施工能力問題への対応についてただした。東京圏では、2008年のリーマン・ショックで止まっていた大型都市再開発事業が一斉に動き出そうとしており、筆者が調べただけで60件以上、開発面積の合計は240haに達していた。

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