大阪万博「工事遅れ」背景に施工能力不足の深刻 大規模災害の復旧復興への対応をどうするか

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2021年7月に、災害時にトラックなどを使って被災地へ応急仮設住宅として移動できる恒久仕様の木造モバイル建築の普及を進める「日本モバイル建築協会」(代表理事=長坂俊成・立教大学教授)が発足した。モバイル建築はトラックで運べるサイズの木造の箱型の住宅ユニットを連結・積層することで、世帯人数に応じた広さや間取りの住宅を設置することができる。

普段は地方創生に資する移住体験住宅やワーケーションなどの宿泊施設、地域課題を解決するさまざまなコミュニティ施設などとして利用し、大災害発生時には被災地に迅速に移設し、応急仮設住宅(動くみなし仮設住宅)として活用する。

仮設住宅として使用後は復興住宅に転用

モバイル建築は一般の住宅と同等以上の耐震性と断熱性、耐久性を有するため、仮設住宅として使用後は本設の復興住宅に転用することもできる。戸建て住宅大手の一条工務店、東急建設、長坂教授が設立したベンチャー企業のスタンバイリーグ等が参加して、普及活動に取り組み始めたところだ。

同協会は会員に対してモバイル建築の製造ノウハウを無償でライセンスする制度を活用し、大型木造建築パネルの生産ネットワークと連携。災害発生後に国内の森林資源を活用したモバイル建築をオフサイトで生産し、被災地に供給する全国的なサプライチェーンの構築を目指している。

利島村に設置されたトレーラーハウス(写真:ソフトバンク)

ソフトバンク、水循環システムのWOTA、トレーラーハウスを手がける岩手ガス会社、北良の3社は、水飢饉を何度も経験してきた東京都利島村で、オフグリッド型のトレーラーハウスを設置して今年6月から実証実験を開始した。利島村は道路が狭いため実証ではトレーラーハウスを小型化したが、通常タイプでWOTAの小規模分散型水循環システムと太陽光発電システムを搭載して、家族4人が暮らせる住環境をめざしてシステムの改良を進める。

急激に人口減少が進むと、経済活動における需要と供給の関係は、主導権が逆転するといわれる。人口が増えて需要が増大している時代には、新規投資や新規参入で供給サイドが需要に合わせてきたが、人口が減って需要が縮小していく時代は、限定的な需要に供給が対応できずに、需要が供給に合わせざるをえなくなる。建設市場でも、そのような逆転現象が一部で起こりつつあり、発注者はこのことを十分に認識したうえで、工事発注の効率化を図るとともに事前対策に取り組む必要がある。

千葉 利宏 ジャーナリスト

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ちば・としひろ / Toshihiro Chiba

1958年北海道札幌市生まれ。新聞社を経て2001年からフリー。日本不動産ジャーナリスト会議代表幹事。著書に『実家のたたみ方』(翔泳社)など。

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