北海道新幹線「並行在来線」バス転換協議の泥沼化 地元住民は不信感、日に日に増す道庁批判の声

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中村裕之衆議院議員は、「国土交通省では、昨年2022年7月に『地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言』を発表しているが、なぜ道庁はこの発表を待たずに廃止の結論を急いだのか」。協議会では「数値も精査されていなければ、B/Cによる評価もされていない。さらにバス会社との交渉も行っていなかったことから、道庁に対しては不信感でいっぱいだと伝えている」と苦言を呈した。

倶知安町に事務所を置く市橋修治北海道議会議員によれば、地元バス会社から「ドライバーも整備士もいないのに鉄道代替バスの引き受けができるわけがない」という声が上がっているという。バス転換が難しいという話になれば「在来線の再活用も含めて協議をさかのぼって再検討しなければいけないのではないか」と長万部―倶知安―余市間のバス転換協議も難航していることを示唆する。

さらに、6月18日に5人が死亡した八雲町の国道5号線で発生した札幌発函館行の都市間高速バスとトラック正面衝突事故の話題に触れた参加者もおり「鉄道の廃止が進み北海道での交通手段が自動車交通一択となれば、道民はつねにこうした交通事故のリスクを抱えながら生活することになる」という不安の声も上がった。

取材に応じようとしない道庁関係者

道庁側の言い分も聞いてみようと、並行在来線対策協議会の座長を務めた柏木文彦元道交通企画監への電話取材を試みた。柏木氏は、2022年3月いっぱいで北海道庁を定年退職し、現在は公益財団法人の常務理事を務めている。

柏木氏に対し筆者は、「北海道の交通政策を決定する立場にあった柏木氏は、どのようなポリシーのもとに議論を主導したのか」という問いを投げかけたが、柏木氏は「私はすでに関与する立場にない」として、ノーコメントを貫いた。

筆者は、並行在来線対策協議会のずさんな実態などについてどのような考えを持っているのかなど鈴木直道知事に話を聞きたいと知事室秘書課にも以前から取材を申し入れているが、対応窓口とされた道政相談センターの西澤正所長から「鈴木知事はあらゆる事実確認にも応じない」と回答されたことは、2023年3月21日付記事(北海道新幹線「並行在来線」代替バス案の理不尽)でも触れたとおりだ。実はこのとき、知事室秘書課が最初に窓口としてきたのは道政相談センターの苦情処理担当者だった。「その対応は不誠実ではないか」と苦言を呈したところ、西澤所長に担当が変更となった。

廃線問題が浮上していた同じ北海道新幹線の並行在来線である函館―長万部間については貨物を維持する方向で結論が出されたが、そもそも同区間は日本の食糧安全保障や国防にもかかわる重要幹線である。にもかかわらず廃線問題が浮上すること自体が北海道行政の異常さを露呈している。これが北海道庁の実態だ。

櫛田 泉 経済ジャーナリスト

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くしだ・せん / Sen Kushida

くしだ・せん●1981年北海道生まれ。札幌光星高等学校、小樽商科大学商学部卒、同大学院商学研究科経営管理修士(MBA)コース修了。大手IT会社の新規事業開発部を経て、北海道岩内町のブランド茶漬け「伝統の漁師めし・岩内鰊和次郎」をプロデュース。現在、合同会社いわない前浜市場CEOを務める。BSフジサンデ―ドキュメンタリー「今こそ鉄路を活かせ!地方創生への再出発」番組監修。

 

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