北海道新幹線「並行在来線」バス転換協議の泥沼化 地元住民は不信感、日に日に増す道庁批判の声
筆者はこのフォーラムで、「余市―小樽間の鉄道を廃止しバス転換した場合の所要時間の増加による経済損失額が、当初、道庁が試算した赤字額を上回る」という話をした。余市―小樽間の平均的な所要時間は、鉄道の23分からバスの43分に20分程度増加し、この所要時間増加による経済損失額を国土交通省が公開する「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル」に沿って計算すると、その損失額は年間で少なくとも5.7億円に上ることが判明した。これは当初、北海道庁が公開した年間5億円の赤字額をも上回り、鉄道の廃止による地域へのデメリットはかなり大きいといえる。北海道外のケースであれば公費投入が妥当と結論付けられ確実に鉄道存続となる。
なお、計算式については「輸送密度[人/日]×365[日/年]×時間差[分]×時間価値[円]」で簡易的に算出。具体的な数値を当てはめると「2,144[人/日]×365[日/年]×(43-23)[分]×36.2円」で約5.7億円となった。特に時間価値については、富山市交通政策監で富山大学特別研究教授の中川大氏より「恣意性を排除するためにマニュアルで定めている値を用いることが望ましい」という助言を受け、マニュアル記載の全国平均値を用いて算出した。なお、筆者はこの資料をその後「余市駅を存続する会」に提供しており、このフォーラムの動画は会ホームページでも公開されている。
フォーラムの参加者からは「今からでも遅くない。定期的にこういったイベントを開催し鉄道存続の声を広げていくべきだ」という声が上がった。
小樽市のセミナーには市長や代議士も参加
7月8日、15日には、小樽市内を始めとした後志地方の経営者が主に所属する「小樽市倫理法人会」で、並行在来線廃止を問題提起するセミナーが開催され、筆者も登壇しこれまでの取材内容をお話しさせていただいた。
セミナーを主催した拝田昇会長は、「当初、並行在来線問題は小樽市民には関係ない問題だと思っていたが、話を聞けば聞くほど小樽市民に周知しなければいけない問題だと危機感を持ち開催を決めた」と話す。例えば、7時台の朝ラッシュ時には鉄道の代替便だけで10台以上のバスが必要になること。このバスが朝のマイカー通勤者で混雑する国道5号線に集中することになれば深刻な交通渋滞を引き起こすことは明白で、小樽市内の道路事情にも影響を及ぼすリスクも高い。こうなってしまえば、小樽も含めた余市や積丹など後志各地の観光地への客足が遠のいてしまうなど広域観光や経済活動への悪影響も懸念される。
セミナーは早朝6時30分からの開始だったにもかかわらず、小樽市のほか余市町や倶知安町などの経営者や議員を中心に約40人が参加。小樽市の迫俊哉市長、地元選出の中村裕之衆議院議員、おおつき紅葉衆議院議員のほか複数名の道議会議員や市町村議会議員の出席もあった。
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