北海道新幹線「並行在来線」バス転換協議の泥沼化 地元住民は不信感、日に日に増す道庁批判の声
通常であれば、広域自治体である都道府県は、基礎自治体である市町村間の利害を調整し地域全体の発展の手助けをするのが務めであるが、余市町関係者は「道庁は自治体間の利害を対立させ、地域が結束して道庁に刃向かわないように巧妙に議論を誘導している」と不快感をあらわにする。余市町の齊藤啓輔町長も、筆者の取材に対して「道庁は、地域のことを何も考えていないこと、戦略も何も持っていないことが5月の協議会で露呈した」と話す。協議会は生産性のない「仕事のための仕事を繰り返しているだけだ」と苦言を呈した。深刻化するバスドライバー不足も相まってバス転換協議は泥沼化の様相を呈している。
鉄道廃線で道想定の赤字額を上回る経済損失
東洋経済オンラインでは北海道新幹線の並行在来線問題についてたびたび報じてきているが、沿線からもこうした道の姿勢に対する疑問の声が上がり始めている。2023年に入り筆者も余市町や小樽市、そして倶知安町など沿線団体から講演や勉強会に呼ばれる機会が増えた。
並行在来線問題の本質については、北海道交通企画監の柏木文彦氏(当時)が座長を務める協議の場で、最初から輸送密度が2000人を超える余市―小樽間を含め長万部―小樽間140.2km全線の廃線ありきでの協議が進められたことだ。同程度の鉄道路線のおよそ7倍の経費で赤字額が試算され、鉄道維持のためには沿線自治体の財政規模を上回る負担額が必要になると沿線自治体の首長は事実上「財政破綻か鉄道廃止の2択」を迫られ、廃線に合意させられた。
協議の場には地域の交通事業者を入れずに話を進めたことから、沿線にバス路線網を展開する北海道中央バスは激怒。ドライバー不足などから鉄道代替バスの引き受けに難色を示している。4月25日に余市駅エルラプラザで行った「余市駅を存続する会」主催のフォーラムでは、平日にもかかわらず、余市町だけではなく小樽市や蘭越町など沿線から約60人が参加したほか約20人がインターネット配信を視聴。沿線住民の関心の高さが明らかになった。
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