「毎日50錠の市販薬を飲んだ」彼女の壮絶な体験 大学生2年生のときに薬物依存に陥った男性も

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添付文書に書かれている使用量の倍以上飲むと、高揚感が出て、集中力が増す。研ぎ澄まされるような感覚を覚えた。一方で、薬が切れると全身がだるくなる、気力もまったくなくなった。最も嫌だったのは、薬が切れると現実が見えてしまうことだった。

大学に行っていないこと、単位が取れていないこと、そういう問題から目をそらすため、市販薬の過剰摂取を続けた。

両親が田畑さんの問題行動に気づいたのは、3年生のときだったという。

「うつ症状がひどくなったので、一度、実家に戻ったんです。もちろん薬はやめられないので、部屋で隠れて使っていたんですが、ある日、親が大量の薬を見てしまって、それで発覚しました。それからは半ば開き直って、使っていました」

両親は息子の要求をなんでも聞いていた

田畑さんは一人っ子。親の愛情を一身に受けて育った。何でも言うことを聞いてくれ、何でも買ってくれる親だった。それは息子が市販薬を過剰摂取していることがわかってもなお、変わらなかった。田畑さんがなかば脅すような感じで金銭を要求すると、渡してしまう。

「両親自身、薬物依存症の息子とどう接すればいいか、わからなかったんだと思います」

その状況が変わったのは、両親が地域の精神保健福祉センターに相談にいってからだ。たまたまその場にいたダルクのスタッフに相談し、以来、家族会にも参加するようになった。そこで親の態度が変わったという。

「薬物依存のサイトなどを見せて、こうしたらどうかとか、これを見たらどうかといった過干渉が止まりました。『困ったことがあったら、相談窓口に連れて行くから』とだけ言われ、お金も必要以上の額は出さなくなりました。それが、自分が変わるきっかけの1つだったと思います。ダルクに相談にいこうって思ったんですよね」。田畑さんはこう振り返る。

それから14年。今はダルクのスタッフとして支援する側にいるが、それは簡単な道のりではなかった。やめてはまた服用し、やめてはまた服用し、というなかで徐々に“クリーン(薬が止まった状態)”になっていった。

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