「毎日50錠の市販薬を飲んだ」彼女の壮絶な体験 大学生2年生のときに薬物依存に陥った男性も

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「何となく仲良くしてくれて、うれしかったんですよね。その彼が勧めるものだし、(違法じゃない)市販薬だし、目の前で使っている人たちが楽しそうだし、1回ぐらいなら大丈夫だろうって思って。それがきっかけです」

薬を過剰摂取することで、何となく感じていた「生きづらさ」が解消され、生きることが楽しくなったという。結果、初めは男性と会うときだけにしていた市販薬の乱用がやめられなくなくなる。毎日1瓶、2瓶空けるようになった。

高校を卒業し、専門学校に通いはじめた勇さん。1人暮らしを始めた。市販薬を買う費用は親の仕送りから捻出したが、それでも足りなくなり、接待を伴う店で働くようになった。その時期から学校にも行かなくなった。

「薬はまとめて買うと店員さんから変な顔をされるので、いろんなお店をハシゴして買い集めましたね。住んでいる地域にはドラッグストアがたくさんありましたから。ただ、それとは別に1つ御用達のところもあったんです。近所にあった薬局で、毎回『咳止め4つね』とか言って、棚から出してくれました」

使う薬の種類が日に日に増えていく

毎日50錠ぐらいを一度に服用する。この使い方は「普通じゃないってわかっていました」と勇さんは言う。「でも……」。

「でも、私は生きやすさを求めて使っていたので、それを取り上げられたくなかった。やめることはまったく考えていませんでした」

彼女の場合、使う薬の種類がどんどん増えていった。というのも、周りには違法薬物を使う人たちも少なくなかったため、勇さんも彼らに勧められてそれらを使うようになる。抵抗感はなかったという。

「いきなり覚醒剤だったら怖いと思ったのかもしれませんが、薬による気分の高揚を知ってしまったので、これもやってみようかなという感じでした。それでも、注射器を見たときはドキッとしました」

市販薬の過剰摂取に覚醒剤。薬漬けの毎日に体も心もボロボロになっていることは、自覚していた。やめたほうがいいことや、このままではダメになっていくことも想像がついた。しかし、朝、目が覚めると薬を探しはじめる。空き瓶が転がっている部屋で、薬が残っていないか探しまくる。必死だった。

「この感覚って、わかりますかね。発狂しそうになりながら薬を探し続けるんです」

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