だったらどこから金を借りているのか。まず、未払い金が1兆0565億元もある。これすなわち20兆円である。つまり恒大集団から、金を払ってもらえないカスタマー(たぶん建設会社や製鉄会社や運送会社など)が存在していることになる。普通だったら、果てしない連鎖倒産を生みかねない規模である。
ところが、である。おそらくは恒大集団に対して売掛金を立てている企業群は、ほとんどが国有企業であって、たぶん党本部から「余計なことするな」というお達しが出ているのであろう。ゾンビ企業を助けるために、周囲も一緒にゾンビになる、という恐怖のメカニズムである。これが20兆円規模だというから恐れ入る。
もっと罪深いのは、6039億元の「契約負債」があるということだ。この正体は何かといえば、中国では家が完成する前に3割程度の手付金を払うことになっている。ところが恒大集団に仕事を発注した消費者の多くは、金は払ったけれども家はできていない。それが12兆円規模、と考えるといかにも恐ろしい。
いくら中国が民主主義国家ではないとはいえ、さすがにこの問題をスルーするわけにはいかないだろう。ちゃんと家を完成させて買い主に引き渡すか、あるいはお金を返すべきである。とはいえ、そんなややこしい話が簡単に進むはずがない。
バブル崩壊の被害を企業と個人がもろにかぶるのが中国
どうも中国経済は、「金融システムに累が及ばないように」制度設計したのはいいけれども、バブル崩壊の被害を企業と個人がもろにかぶるようになっているのではないか。いくら日本の経験に学んでいても、バブル崩壊はやっぱり容易なことではないのである。
普通の資本主義経済とは違い、中国の場合は政府が不動産供給を絞ることができる。財政的な余力もあるので、いざとなれば打つ手はある。とはいえ、もともと「共同富裕」を掲げる習近平政権が、「住宅は住むものであって投機対象ではない」とバブルつぶしを始めたのが発端だったという経緯もあり、対応はついつい後手に回っているように見える。
ともあれ、「スゴすぎ」アメリカ経済と「ヤバすぎ」中国経済のコントラストは、秋以降の日本経済にも確実に影響してくるだろう。引き続き注視していこう(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
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