たとえば、同戦略で提唱された「スタンド・オフ防衛能力」の構築にあたっては、衛星コンステレーションは、遠方の目標の識別および位置情報の高頻度な取得、(攻撃後の)迅速な目標の被害評価を可能とする情報収集能力や、巡航ミサイルを含めた広域に展開するアセット間の冗長かつ高速な通信能力など、根幹となる機能を、従来不可能だったレベルで提供できる。
特に情報収集の頻度においては、衛星の機数の多さゆえに、衛星コンステレーションは、従来の宇宙システムと比べて桁違いに高い能力を有する。
ただし、衛星コンステレーションを含む宇宙システムは、地上での作戦運用に必要な機能をすべてカバーできるものではない。
重要なのは、地上での作戦運用コンセプトをいかに具体的に立案するかであり、その一部として宇宙システムに求められる機能が導き出されるべきという点であろう。
衛星コンステレーション導入の課題
また、衛星コンステレーションの導入にあたっては、高頻度な打ち上げ機会の確保、全体のコストの不透明さ、大規模な衛星群の運用管制やデータ処理、宇宙デブリ発生の懸念など、数々の課題が想定される。
その他にも、政府が商業サービスをどれだけ利用し、逆にどこまでを政府のシステムとして構築するのか、アメリカ等の同盟国・同志国との相互運用性の確立や役割分担など、さまざまな論点も存在する。
しかし、防衛省・自衛隊が作戦領域をより遠方に拡大させていくのであれば、衛星コンステレーションは非常に有用な能力を提供可能であり、その活用は避けては通れないものと考えられる。
したがって、この新しいシステムを活用するためにも、上記の課題への対処とともに、国家安全保障戦略にて提唱された各種能力の運用コンセプトの具体的な立案が急務であると言えよう。
(梅田耕太/地経学研究所 新興技術グループ 客員研究員)
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