「特捜検察」の暴走、なぜ無罪判決が相次ぐのか ストーリー優先で証拠集め、調書は検事の作文

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村木事件をきっかけに導入された取り調べの録音録画がされている中で、田渕は取調室の机をたたき、小林を侮辱し、精神的苦痛を与えた。大阪地裁は「録音録画された中でこのような取り調べが行われたこと自体が驚くべき由々しき事態」と指摘している。

弘中は前出の著書の中で、検察が事件をでっち上げる手法を20に分類している。村木事件など過去に受任した冤罪(えんざい)事件での手法だが、これらは今もなお使われている。

例えばプレサンス事件では「山岸が横領を知っていた」という誤った見立てで証拠集めをした(上表の手法1)。長期勾留し山岸を心身ともに追い込んだ(同9)。

公安警察が立件した大川原化工機事件は検察の手法そのままだ。「生物兵器に転用可能と知っていて不正に輸出した」という誤った見立てをし(手法1)、温度の上がらない箇所があるという客観的・科学的事実には目をつぶり(同2)、警部補が供述調書をひたすら作文した(同3)。調書に「不正に」などの化粧を施して真実らしさを装った(同17)。検察は公安警察の言いなりになって大川原化工機の大川原正明社長らを起訴した。

最大の武器は人質司法

検察の権力の源泉は何か。元検察官の郷原信郎弁護士は「人質司法が最大の武器だ」と指摘する。

検察は容疑者を逮捕すると48時間拘束できる。裁判所に勾留が認められると10日間拘束でき、再度同じ手続きでさらに10日間延長できる。つまり逮捕から最長で22日間拘束できる。

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