このような状況に対して、警視庁や東京市などは感染症の蔓延を恐れ、応急対応として仮設トイレの急設、掃除隊による清掃と消毒、自動車や四斗樽、手車、汲み取り桶、天秤棒、柄杓(ひしゃく)などを調達して対応しました。
震災後の復興とともに下水道が普及し、汲み取りから水洗へと変わり、令和3年度末の東京都の下水道普及率は99.6%(日本下水道協会の調べ)です。100年前とは街も人口もトイレの方式もまったく異なります。このような環境下で私たちはどのように備えるべきかを考える必要があります。
トイレ問題がもたらす深刻な事態
関東大震災以降、日本では多くの災害を経験してきているわけですが、残念ながらトイレ問題は繰り返し起きています。
トイレ問題がもたらす深刻な事態として主なものを3つ挙げます。それは、「感染症の温床になること」、「トイレを敬遠することで脱水症やエコノミークラス症候群などになること」、「集団の秩序が保てなくなり治安が乱れること」。つまり、トイレ問題は“命と尊厳に関わること”として認識すべきなのです。
そこで、筆者のいる当研究所では、地方公共団体によるトイレ対策の現状を把握することを目的として、アンケート調査を実施しました。以下に、調査結果の主なものを説明いたします(詳細はこちらをご覧ください)。
トイレ対策に限らず、防災を徹底するには計画の作成が欠かせません。2016年に内閣府(防災担当)が作成した「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」では、市町村に対して災害時のトイレ確保・管理計画の策定を求めています。
しかし、その計画を策定していると回答した自治体は、24.1%でした。
また、地域防災計画で想定する最大規模の災害が発生した際、想定避難者数に対して災害用トイレが「足りる見込み」と回答した自治体は30.7%で、「不足する」41.3%、「わからない」27.7%でした。
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