災害時「トイレに説明係」が必要になる深刻な理由 関東大震災から100年、これからのトイレ対策

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実は切実、避難所以外のトイレ問題

これまでの避難は避難所に集まることが主でした。

しかし、とくに都市部では避難所の収容能力を被災者数が大きく上回っていることが課題になっています。さらに新型コロナウイルス感染症による感染防止対策として密を回避することが求められていますので、避難所避難が困難になりつつあります。

そのため、自宅が安全であればそこにとどまったり、親戚や知人宅、宿泊施設などに避難したりする分散避難が勧められています。

このとき水や食料以上にトイレが問題になると筆者は考えています。

耐震化や不燃化が進み、建物の倒壊や延焼を免れる可能性は高くなっていますが、断水や排水設備の損傷などにより、水洗トイレが使えないことが想定されます。せっかく建物が大丈夫でもトイレが使えなければ、そこで生活を継続することはできません。

しかし、避難所のトイレを在宅避難者が使用することを想定していると回答した自治体は33.1%でした。また、在宅避難者へのトイレ支援を検討していると回答したのは15.7%でした。在宅避難者の多くは災害用トイレを備えていませんし、避難所のトイレを期待していることが予想できます。分散避難を勧めるためには、トイレ問題を解決することが重要です。

災害時のトイレの備えに関するアンケート調査/特定非営利活動法人日本トイレ研究所(災害用トイレ普及・推進チーム)
災害時のトイレの備えに関するアンケート調査/特定非営利活動法人日本トイレ研究所(災害用トイレ普及・推進チーム)

災害用トイレがどのようなものであるかを知っている市民は少ないと思います。使ったことがある人はかなり少数でしょう。

災害時にトイレを衛生的に保つには、災害用トイレの使い方を周知することが必要です。西日本豪雨の際、愛媛県の病院ではトイレに説明係を配置しました。 間違った使い方や失敗は、汚染や感染症の伝播につながるため、使用方法の周知は非常に重要なのです。

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