トップ層の東大生が起業を選ぶようになった必然 官僚輩出は今は昔、ベンチャー企業の聖地へ
藤井総長の掛け声だけではありません。東大では、近年、「ベンチャー企業の育成」を大学の第一の使命に掲げて、多種多様なベンチャー企業育成施策を展開しています。
まず資金。2004年創業のUTEC(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)は、本郷キャンパスに本社を置くベンチャーキャピタル。これまで累積で850億円近くの5本のファンドを運営し、150社以上に投資を行ってきており、うち20社が株式上場しています。
東大の産学連携の要になっているのが、産学協創推進本部が運営する「東京大学 FoundX」。これから起業に挑戦する東大の卒業生・研究者向けに、 起業に役立つリソースを無償で提供しています。
また、在校生向けの起業家教育にも力を入れています。「東京大学アントレプレナー道場」という起業を初歩から学べるプログラムも用意されており、東大生なら誰でも履修登録をしなくても自由に受講することができます。
こうした東大の全学を挙げた取り組みが、着実に成果に上げています。全国の大学発ベンチャーの総数3782社のうち、東大の大学発ベンチャーは371社で、全国の大学でトップです(経済産業省「令和4年度大学発ベンチャー実態等調査」)。いまや東大は、日本における「ベンチャー企業の聖地」なのです。
なお、ここでの大学発ベンチャーとは、大学での研究成果に基づいて設立された企業や大学生・大学院生が立ち上げた企業とともに、「(学外の)創業者が持つ技術やノウハウを事業化するために、設立5年以内に大学と共同研究等を行ったベンチャー」などを含みます。
トップ層の東大生が起業に挑戦
大学発ベンチャーのうちもっとも多いのは、大学での研究成果に基づくものです(全体3782社の50.6%)。ただ、それに次いで多いのが現役の大学生・大学院生による起業で、全体の24.6%を占めます。そして近年、この学生起業の増加がとりわけ顕著です。
東大で学生起業の中心となっているのが、日本におけるAI研究の第一人者である松尾豊教授の研究室。昨今のAIブームという追い風を受け、大学からの手厚い支援もあって、松尾研究室からはベンチャー企業が続々と産声を上げています。
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