トニーはその後『ザッポス伝説2.0 ハピネス・ドリブン・カンパニー』という本を書くなど、カルチャーを通じたコミュニティー作りのコンセプトを誰よりも理解していた。残念なことに、2020年にトニーは亡くなってしまったけれど、彼が僕たちの組織にもたらした影響はコミュニティーが続く限り生き続けるだろう。彼があの夜僕たちに授けてくれた知恵によって、サミット・シリーズの方向性は変わった。
打ち上げのパーティーは深夜2時に終わったが、僕たち4人は今回経験したことについて夜明けまで語り合った。有頂天になっていたわけじゃない。成功したこととしなかったことをあぶり出して、サミット・シリーズをこの次どうするかを確かめ合ったんだ。
トニーのおかげで、僕たちは自分たちの会社を単発のイベントを次々に開催するイベント会社ではなく、永続的なコミュニティーを作っていく手段にしようと考えるようになった。そうなると、次の2つのシンプルな問いが参加者の資格となる。
1. 自分たちが招待したい人たちは、世界で画期的なことをしているか。
2. その人たちは心優しく、成長を心から願う開かれた心の持ち主であるか。
この基準は単純明快だけど、とても説得力がある。この2つの問いによって、サミット・シリーズの方向性は劇的に変わった。あの晩まで、僕たちには自分たちが築きたいものを表現する言葉が欠けていた。僕たちはユタ州とメキシコで2つのイベントをこなしていたが、コミュニティーというもっと大きな意味でサミット・シリーズをとらえていなかった。
アイデアは、それにふさわしい言葉で言い表して初めて具体化される。僕たちが参加者として来てほしいと思うようなとても優れた人たちは、そう簡単に集められるわけじゃない。だから、そういう人たちを招くときに大事なのは、サミット・シリーズを明確かつ簡潔に定義し、なるほどと思わせることだ。自分の使命をはっきり説明できれば、ほかの人たちから信用が得られるし、自分自身の信念も確かめられる。
どれだけ資産があるかは問わない
僕たちが新たに作った参加基準を見ると、どれだけ資産があるかは問わないということがわかるはずだ。
僕たちのイベントの対象は、フォーチュン500のリストに入るエグゼクティブに限らない。
たとえばアーティスト、慈善事業の代表者、科学者、シェフなど、幅広い才能に門戸を開いている。いずれも僕たちのコミュニティー作りに寄与して、中身を充実させてくれる人たちだ。つまり、僕たちと情熱を共有する人たちなら誰でも参加できることを明確にした。「世界を変える25歳未満の25人」リストの人たちに限らず、広く募りたい。