田中直毅・国際公共政策研究センター理事長--戦後体制は有事を想定せず、政府は危機対応力を欠く

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田中直毅・国際公共政策研究センター理事長--戦後体制は有事を想定せず、政府は危機対応力を欠く

地震・津波の被害による避難生活者はいまだ13万人、東京電力福島第一原子力発電所の大事故の被害も拡大している。東日本大震災後の政府の対応への評価、日本の抱える問題点を、田中直毅・国際公共政策研究センター理事長に聞いた。

--未曾有の津波被害、原子力発電所の事故とかつてない国難です。政府の対応をどう評価しますか。

日本政府は非常時にリーダーシップを発揮していないという批判がある。なぜそうなのか。

第二次世界大戦後の日本は戦争の遂行能力を消すということにアイデンティティを求めることから始まった。理もなく義もない戦争で日本国民に惨禍をもたらし、近隣諸国にも迷惑をかけた。だから、米国も近隣諸国も日本の戦争遂行能力をなくすということが極東の重要な課題であると考えたし、日本自身もそう考えた。それが、平和憲法として日本国憲法に反映され、政府の仕組みの中にも取り入れられた。共通の目標を掲げて国民を総動員していく体制はもう取らないと。そのことによって新しい価値を求めよう、ということで戦後の日本は出発した。

その一つの表れが、安全保障を米国に委ねるということだった。1960年の安保改定は、日本が日米安保体制を選択するという意味があった。日本の防衛を米軍は担うが、日本側からは応援しない、ただし、それでは片務的なので、範囲を極東、周辺地域に限って、基地を提供いたします、という仕組みだった。

自衛隊は「警察予備隊」として出発した。これを国民を騙(だま)すためのとぼけた呼び名と見る人もいたけれども、実際に自衛隊は暴漢を防ぐ警察であって、後は米軍にお願いしますという内容だった。だから尖閣列島で中国の漁船が突っ込んできても、海上保安庁がこれを排除するだけ。これが戦後の基本パターンだ。尖閣問題がそれ以上の大事に発展しそうになったらどうするか、という思考のトレーニングはできていない。

指導力なく、想定外を考える能力が欠如

今回の大震災への対応の問題も同じこと。戦後一貫してリーダーシップの発揮というのはあまり見られない。民主党と自民党の違いとはいえない。過去の首相で、危機のときにリーダーシップを発揮しえたかもしれないのは佐藤栄作、吉田茂、小泉純一郎、中曽根康弘の4人だけだろう。この4人の共通点は在任期間が長いことと、党内の異論を無視できたことだ。日本にはものすごい数の衆議院議員がいて、みんな国民の代表という自負心があるから、自分にも何かやらせろと言う。それを、党内民主主義なんてものはない、党首が政策を掲げてその政策に有権者が同意した以上、政策実施について授権された、という思想で通した。そういう人なら、今回の大震災後の対応も多少違ったかもしれない。

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