田中直毅・国際公共政策研究センター理事長--戦後体制は有事を想定せず、政府は危機対応力を欠く

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中央割拠と地方丸投げ 非常時に機能しない

岩手県の大槌町では町役場が流され、住民基本台帳のデータも失われた。だが、岩手県はそれに接続できない。なぜかと言えば、旧社会保険庁で年金保険料未払いの政治家情報がリークされるという類(たぐい)が想定されたからだ。つまり役人ののぞき見が問題になり、住民基本台帳でさえ、国はコントロールできなくなった。

縦割りで農水省から県の農林水産部に行き、そこから町の農林水産課に行く。横のつながりがないから、大槌町の役場が流されると、何もかも動かなくなってしまう。

ところがムダに役人の数は多い。「雑豆」データは誰も使わないのにそろえている。「庭先漁港」という言葉があるが、どこかにきれいな漁港ができると、ウチもウチもと近隣に漁港が増え、被災三県だけで263港ある。族議員と行政の共存共栄でやってきた揚げ句、非常時になると、必要なデータすらそろわない。

日本では住宅も漁港も農地も造りすぎで余っている。日本のスペースをどう考えるか、復興に際してはその視点が大切だが、現政権にそうした前提を整理する能力があるのかは疑問だ。

──こうした混乱の中で4月の統一地方選挙が行われました。

陸上自衛隊員よりも地方議会の議員に適任な仕事がある。被災地の自治体では人手が足りないと困っている。選挙を延期して、地方議員も地方公務員も手伝いに行くべきだった。勉強にもなる。多少とも命令権のある自衛隊と警察と消防は手伝いに行った。自治体の窓口で多少待たせても、被災地に手伝いに行っていると言えば誰も怒らないはずだ。

鍛えられていない民主主義を内側からどう鍛え直すかが、われわれの課題だ。

たなか・なおき
1945年生まれ。68年東京大学法学部卒業、73年同大学院経済学研究科修士課程修了、国民経済研究協会主任研究員を経て84年より本格的に評論活動開始。97年21世紀政策研究所理事長。2007年国際公共政策研究センター理事長。「郵政民営化委員会」委員長など政府関係の委員歴任。近著に『5年後の日本と世界』。

(聞き手:大崎明子 撮影:引地信彦 =週刊東洋経済2011年5月14日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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