「さみしさ」が私たちを苦しめる脳科学的根拠 人間は社会的集団を作ることで生き延びてきた
また、他人のさみしさを感じにくい、理解しづらいという人も、さみしさは他人と共有するのが難しい感情ですから、決して冷淡な人、思いやりのない人ではないことがわかるでしょう。
人はさみしさを感じてしまう生物だという、生物学的事実を大前提にしながら、
「なぜ、いま自分はさみしいと感じてしまうのだろう?」
「仲間といるのに、さみしさを感じるのはなぜだろう?」
「自分を苦しめているこの感情の正体はなんだろう?」
というように思考を巡らせて、さみしさの本質と向き合っていく。
そうすることで、あらためて自分の人生を捉え直したり、それまであいまいにしていた自分の本心や勝手な思い込みなどに気づいたりしながら、よりよい人生を歩んでいくことができるのではないでしょうか。
ネガティブな感情は脳の防御メカニズム
自分のネガティブな感情は、実は脳の防御メカニズムによるものだという知識を持つことで、自分を客観的に見つめ、「より適切な対処法を考えよう」と思える気持ちの余裕と、ベースづくりができるはずです。
前述したように、さみしさはコントロールすることがとても難しい感情です。もし、さみしさという感情に支配されて思考が停止してしまうと、他人からのどんなアドバイスも真剣に受け止めることができなくなってしまいます。
さみしいという感情に気づかないふりをしたり、ほかのことで紛らわせたりすることはできるかもしれませんが、完全になくすことはできません。その感情を紛らわすために、不適切な方法を選択し、より大きなトラブルを抱えてしまうこともあります。
さみしさは、人が人間社会を生きるうえでのレジリエンス(回復力)を高め、進化の源につながってきた本能だとすれば、さみしさがつらく、ときに痛みを伴うやっかいな感情だったとしても、さみしいと感じている自分の心を静かに見つめ、大切にしながら上手に付き合う方法を考えることができます。
そうすることで、さみしさをおそれて健康や日々の生活が乱されることがなくなり、少しでも生きづらさを減らしていけるのではないか――。
さみしさは、特定の出来事が原因としてあるわけでなく、生理的に生じてきてしまうこともあり、それがやっかいなところです。幾度も湧きあがってくるこの捉えどころのない感情の仕組みを知っていれば、そのたびに、「このさみしさはどこからやってきたのだろう」「どうすればこれ以上、心の痛みを強くせずにやり過ごすことができるだろう」と考え、知恵と知識によって、この感情を乗り越えやすくなるのではないかと思うのです。
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