大震災の影響は限定的 財政健全化の努力継続を--OECD事務総長 アンヘル・グリア
東日本大震災で未曾有の難局を迎えている日本経済。震災からの復興と経済成長、エネルギー問題をどうするか。そして、財政健全化など従来からの構造問題と整合性のある施策が打ち出せるのか。日本の政府と企業に突き付けられた試練は大きい。OECD(経済協力開発機構)のアンヘル・グリア事務総長に、震災後の日本経済が対処すべき課題について聞いた。
──日本経済はいかに復興を果たせると考えていますか。
今回の震災は多くの人命を奪った悲劇です。最大の課題は、いかにして被災者やその家族を助け、住宅やインフラを整備するかにあります。しかし、マクロ経済という点では、その影響は大きくないと考えています。日本経済へのインパクトは限定的です。そして、今回の震災からの復興は、被災地のみならず日本全体で、既存の住宅やインフラの環境を改善する機会ともいえます。
この悲劇に対応する形で、政府や企業はインフラを改善し、サプライチェーンを統合し、それに合わせて、日本の構造問題に取り組む必要があります。われわれは、初等教育から高等教育に及ぶ教育システムの再検討、そして労働市場の二重構造(正社員と非正規社員)の解消を提言しています。これは、単に日本経済の競争力を高めるためだけでなく、社会的な公正、平等性を確保するためにも求められる課題です。
──震災で日本経済の成長率がどの程度落ち込むと予想しますか。
2011年の成長率は0・8%に落ち込む一方、12年には2・3%に回復すると推計しています。11年の第3四半期には復興需要が発現し、生産ラインもある程度通常に戻ると想定しています。金融政策も緩和的であり続けるでしょう。
日本経済と政府の課題は、二つの目的をバランスよく運営できるかです。一つは経済の回復。これは震災からの復興を含めた経済の回復であり、デフレの脱却であり、雇用の創出であります。もう一つは財政再建。債務を減らし、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字を回復し、財政再建へ道筋をつけることです。これから日本では高齢化が加速するため、財政問題に対するプレッシャーはさらに強まるでしょう。